天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

(個人の)スクラムフェス金沢のこれまでのふりかえり

今日は90%くらい自分の思考整理を兼ねて、スクラムフェス金沢のこれまでの個人的なふりかえりをしてみようと思います。(残りの10%は、自分にちょいちょい聞かれるスクラムフェス金沢関連の質問に対するanswerになればいいなと思っています)

運営として関与することを決めるまで

能登半島地震もあり、yanagiさんがスクラムフェス金沢を立ち上げたいというポストを見てからすぐに運営として携わろうと思いました。

何か強い「これ」という理由があったというよりも、やりたい多くの理由があって「これは自分がやるしかないよね」と思ったというのが流れ的には正確なのかなあと思っています。
他にもある気がしますが、ぱっと思いつくもので挙げられる理由としては以下のようなものがありました。

  • yanagiさんとはRSGT2021のDay0(知り合いを増やそうの会)で知り合い、その後スクラムフェス大阪2021で自分が人生で初めて登壇するきっかけを作ってくれた
  • 能登半島地震で知り合いの方が何人も被災しているのを見て、少しでも元気がもらえるようなイベントが開ければいいと思った
  • スクラムフェスの運営には以前から関わってみたいと思っていたが、なかなかタイミングがなかった
  • (完全に余計なお世話なのだが)金沢のアジャイルコミュニティのメンバーの方々が少し地方のスクラムフェスとは乖離があるのかな?と思っていたのと、ほとんどの地方スクラムフェスに参加している自分視点で地方スクラムフェスの様子や雰囲気などを話せれば良いと思っていた

スクラムフェス金沢をなぜやるのか?

スクラムフェス金沢をなぜやるのか?からスタートしたのですが、ここで出てきたキーワードが「対話」と「初心者を応援したい」でした。(1年目に限って言えば能登半島地震は間違いなくある)

ただし、対話に関しては他のスクラムフェスとあまり変わらないのでは?という話と、金沢という地域との絡みがあまりないよなあという点が課題として挙がりました。

正直あんまり納得のいく答えは少なくとも個人としては出ていなかったのですが、期間がない中でなるべく早く「なぜスクラムフェス金沢をやるのか?」の開催趣意書を公開したいという想いが全体としてあったことと、他のスクラムフェスを見ても必ずしもその地域の特色みたいなのものがあるわけではないので、一旦「対話」と「初心者を応援したい」をベースに開催趣意書を書いてしまおうということになりました。
また、初回かつ準備期間が短いこともあるし、「バットを短く持ってふりきろう」という川口さんの言葉を大切にしていこうという話もこのタイミングで出てきました。

このコンセプト自体への違和感や反対したい気持ちはなかったのですが、これまで運営に入る前の自分は、「あんまりその地域ならではの特色やテーマ性が感じられない地域スクラムフェスってどうなんだろう...?」「地方のスクフェスが増えていくことは喜ばしいことだけれど、その地域ならではの特色やテーマ性が感じられない地域スクラムフェスにはそんなに個人としては参加したくないな」という想いがあって、度々コミュニティの方々ともそういう話をしたりしていたので、自分が運営するスクラムフェスがまさにそうなってしまわないか?という懸念は自分の中にありました。
とはいえ、keynoteや集まったプロポーザル、タイムテーブル決めを通して考えていけるものでもありますし、継続していく中で参加者たちがコミュニティの文化や意義を形成してく場面もこれまで多くのコミュニティで参加する中で見かけてきたので、ここをどうにかしないと後々まずくなるという感覚や焦りのようなものは全然なく、今後考えていきたいなーくらいの温度感でした。

また、一度も顔を合わせたこともないメンバーもいるような状態だったので、今後お互いを知っていくにつれて共通の想いみたいなものも見えてくるのかな?と思っていました。

オンライン配信やるのか?

開催に向けた準備を進めていく中で、オンライン配信どうするの?という話題が挙がったのですが、「直接会っての対話を重視したいし、何よりも配信ってかなり難しそうだからやらないでいいよね。セッションが後で見れなくなるのは悲しいから録画だけは採っておこう」ということで、あっさりとオンライン配信はせず現地開催のみにしようという話になりました。

しかし、その後に川口さんが発信してくれた内容を見ると、(品川アジャイルの方々にお願いすれば)どうもオンライン配信の障壁や難易度はそこまで高くないようだということと、収益面の安定化という意味でオンラインチケットの存在は大きいらしいということが分かり、結果的にオンライン配信をやろうということになりました。

この出来事は個人的には思うところが多くて、

  • 他のスクラムフェスの知見をもっと積極的に活用してよいのに、基本的には自分たちだけで完結しようという前提で動いていていたかもしれない
  • 経験が何もない状態で「難しそう」と判断してやめてしまっていた
  • やめるのは簡単だけれども、自分たちが価値を感じているものならその実現可能性をどうにかして模索したほうがいい

のあたりは特に今後の運営で取り入れていきたいなあと個人的に感じました。

プロポーザルはそこまで集まらない?

優先度が高いものから粛々と作業を進めていったのですが、プロポーザルの募集期間を考える(=ConfengineをOpenする)作業の中で、実はスケジュールが結構すでにきついのでは?ということにそこで初めて気が付きました。
おまけに、スクラムフェス大阪とプロポーザル期間が丸かぶりで、プロポーザルが集まりにくそうだという懸念も出てきました。

どうにかして期間を伸ばしたりできないかといった意見も出ていたのですが、「初めてのスクラムフェスだし金沢は能登半島地震もあったから少なくとも今年は皆出してくれるでしょ」みたいな意見もあり、来にしていてもしょうがないのできつめのスケジュール覚悟でいきましょうという話になりました。

個人的には、keynote+数プロポーザルがあれば跡は全部OSTとかでも全然いけるし、対話を重視しているならむしろそちらのほうがいいまであるなーと思っていたので、プロポーザルが集まらないのではないか?みたいな部分に対しては課題感がまるでなく、当然不安もありませんでした。

51件もプロポーザルが来る

プロポーザルわいわい会の開催はありましたが、プロポーザル募集に関しては必要最低限の告知しかしておらず、集まっても30件程度かなという話が出ていました。
しかし、蓋を開けてみると51件もプロポーザルが集まっており、これは運営の中でも大きなサプライズでした。

初登壇の方も多く、かなり理想的な形で集まったのかなあということで、ここから予定い通り採択作業に入ろうという話が出ました。

個人的には、プロポーザルが多く来たのは非常に嬉しかったですし、最高のカンファレンスになるための準備が皆さんのおかげでまた一つできたなと素直に感じました。

採択作業

プロポーザルの採択作業ですが、シンプルに採択するだけではなく、ここで初めてタイムテーブルに関しても議論が行われることとなりました。(事前にこれくらいの枠なのかな?という概算見積もりは立てていた)

最初に採択のプロセスを決めようということになり、以下の記事を参考にしながらプロセスを整備しました。
その後は、その決めたプロセスに沿って議論しながら進めていきました。

kawaguti.hateblo.jp

なお、プロセスは結果的に以下の通りとなりました。

  1. like数で並べる
  2. 何本likeでとるか決める
  3. 運営の推しセッションを決める
  4. もし1社で3本以上入っていたら2本に絞って繰り上げする
  5. 時間枠を調整
  6. 初登壇枠の調整
  7. 地元枠が一定あるように調整
  8. 対話が促されるような構成になるように調整
  9. 特定のロールの人が楽しめないような構成になっていないかの観点でウォークスルーして微調整

実績もありますし、このプロセスに従えば最低限の条件も満たせますし、特に反対意見もなく粛々と議論が進みました。

しかし、いざできあがったセッションを見た時(=上記の9の作業をし始めた時)、個人としては言語化が難しいもやもやが幾つも出てきていることに気が付きました。
ただし、1-8のプロセスに時間がかかっていて9にかけられる時間もあまりないことがあり、一旦飲み込んでとりあえず進めていきました。

結果、開発者が聞いても楽しそうなセッションが薄めで、POが聞いても楽しそうなセッションはなんと0になってしまいました。
ただ、元々集まったプロポーザルの中に開発者が聞いても楽しそうなセッションやPOが聞いても楽しそうなセッションが相対的に少ないので仕方ないという話になり、時間が遅いこともあって一旦これで寝かせてみようということになりました。

AkiさんからのFB

その後、Akiさんがたまたまスクラムフェス金沢の近況が気になっていると声掛けをしてくださったこともあって、23時頃から1時間半くらいかけて、運営MTGで話したことを共有したりできあがったセッションや残課題などを見てもらいました。

そこでは、以下のFBをいただきました。

■ セッションの話

  • 会社制限は3人位に拡張しても良いのでは?5-6人同じ会社だと〇〇社さんのカンファレンスかな?となりそうだけど、3人くらいならそんなに気にならない感じはある
  • 特定カテゴリのセッションが足りないと感じるなら、inviteするのもあり。その分野の代表的な人に声かけてもいいし、他カンファレンスにプロポーザル出している人に打診するとか
  • 折角北國銀行さんがkeynoteならFFGとのつながりも見たい気はする。ラフにやるならkeynote後にmatsusakiさんとのパネルディスカッションとか??
  • 「これ通らなかったのか...」というセッションが出てくるのはしょうがないので、そこを無理に救おうとする必要はない
  • ただし、この話聞きたいんだよなあと運営が思っていたり、こういう話が欲しいけど枠の関係でrejectせざるを得ないみたいなことで困っているならオンライントラックを作ってもいいかも知れない。金沢は現地登壇Mustにしていたので、オンラインで登壇依頼されることが不満な人や、オンライン登壇OKなら自分もプロポーザル出したかったという人が出てくる可能性もあるが、当初想像を超える51件のプロポーザルが集まったのも事実なので、「仕様変更しました」の変更でもいいかもしれない。
  • もしオンライントラックいれるなら、全体の収まりを見てからのほうが良さそう。まずオンライントラックを仮で作ってみて、オンラインセッションやるかどうかの議論するイメージ
  • 現地での対話にこだわりがあるのなら、オンラインで登壇してもらったりセッション視聴はオンラインでしてもらうけれど、OSTや懇親会への合流はOKですというチケットや登壇枠を作るのはありかもしれない

■ 残り作業の話

  • カンバンからだと何をやるのかわからないやつは分量がわからないところもあるのでリファインメントはした方がよさそう。ただ、リファインメントしてください、で出来るものではなく、現時点では何をやるのかもどれくらいかかるのかも分かっていない中でバックログに落としているからそうなっているというのが実情なんだろうと思う
  • ただ、こんなことやりたいんだろうなあという想像でざっと見た感じ、Mustにあるもの + Wantにある発注系などは全部合わせて1週間もあれば終わりそう
  • カンバンにあるものは他のスクフェスで実施した実績があるタスクも多いので、何したらいいのかわからないとかであればもっと気軽に他のスクフェス運営を頼ってもいい

■ 全体の進め方の話(末尾には全てしらんけどが入る想定)

  • 「〇〇をやりたいけれど実現が難しいから諦めよう」はRSGTや他のスクフェスであまりやってない(綺麗に見せているけど実態としてそうなっているとか結果としてそう見えるとかはあるかもしれないけど)
  • 「〇〇をやりたいけれど実現が難しいから諦めよう」と「できる限りの選択肢を全て模索した上で納得のいく理由があって諦める」はぜんぜん違う
  • 安全に安全を期している感じはあるので、もっと可能性を広げてもいいのかなと思う
  • 全てのイベントで毎回やらなくてもいいけれど、自分たちは何を試したいのか?自分たちは何を検証したいのか?自分たちは何にチャレンジしたいのか?がもっとあってもいい気がする。このまま行けば無事にカンファレンス開催できて成功するんだろうなあというのは分かりきっているんだけれど、「これにチャレンジしたけど失敗だったね」があると結果的にはより成功に感じるかも知れない
  • 慎重かつ完璧にやろうとしすぎている感覚はあるが、一度やってみてここまで慎重かつ完璧にやらなくてもよかったね、が分かるでも良いかなとは思う。ただ、一度ものの考え方のフレームを壊さないと、「次はもっとできて当たり前」になって基準がどんどん厳しくなる方向に進んでしまうこともあるので、注意したほうがいい。そうならないように、あんまりメンバーの不安に突き動かされないこと。「こうなってしまうかもしれない」はあるだろうけど、どんどん身動きが取れなくなってしまう

Akiさんも言っていましたが、Akiさんはここまでの運営MTGに常にいたわけではないので、オンラインセッションやパネルディスカッションの話など全部飲み込まないといけないわけではないんだろうなあと思いつつ、本当にその通りだなあというFBもありました。

特に、本当にその通りだなあと思ったのは、「〇〇をやりたいけれど実現が難しいから諦めよう」と「できる限りの選択肢を全て模索した上で納得のいく理由があって諦める」はぜんぜん違うという話でした。
オンライン配信の話で感じたこととも通じるのですが、価値があることが分かっているのに難しそうだからと諦めることは勿体ないなあと思いましたし、「バットを短く持って振り切る」ことを理由にして価値があることが分かっているのに難しそうだからと諦めてしまっているのではないか?(無いトレードオフを勝手に作ってしまっているんじゃないか?)ということに気が付きました。

もやもやの言語化〜どんなカンファレンスにしたいんだろう?〜

こうした出来事を経て、最後にAkiさんからFBをいただけたこともあり、徐々に個人的なもやもやの言語化も現時点ではありますができてきました。

まず、自分は、自分たちがどういう体験をしたいのか?参加者にどういう体験をしてほしいのか?が全体を通してあんまりない気がするのがもやもやしています。*1
例えば現在のカンファレンスのタイムテーブルで言えば、一定実績もあって決められたプロセスに従って作られた以上のものではないような気がしています。
また、タイムテーブル作成以外の残っている作業などに関しても、なんでこういう作業をしたいのか?どれだけ力を入れたいのか?というよりも、作業を終わらせてカンファレンスとしての形を最低限作ることを優先してしまっているような気がしているのだと思います。

次に、(運営ではなく自分が)やれる限りのことをしているのだろうか?という部分がもやもやしているのだろうと思います。
例えば、今の状況ではPOの方は来ても少なくともセッションに関しては楽しめる可能性が薄いカンファレンスになっていると思いますが、「プロポーザルにPOのセッションがないからまあ仕方ないよね」で終わらせてしようとしていないかな?等が具体例です。
自分にはまだ0歳の子供もいますし仕事もあります。また、他にもコミュニティ活動があります。なので投入できるリソースは決して多くないですし、ここで無理をする必要はないのですが、スクラムフェス金沢のことを考えるための時間が週に1時間の運営MTGしか割けないほど時間的なリソースが枯渇しているわけではありません。
また、仮に時間的なリソースが枯渇していても、そのリソースの中でやれるはずのことはまだまだあるはずで、例えばタイムテーブル設計に関してはもう一週間期限を延ばしたり、Acceptを送る作業だけは別の時間に空いている人だけでやるようにして運営で議論をできるような時間を確保したり、色々やれることはあるはずです。このあたりが自分の中ではまだまだできていなくて、もやもやしているんだろうなあと思っています。

今後

もちろん今のままで開催しても、場さえあればカンファレンスとしては一定成功するんだろうなあとは思いつつ、まだまだできることはあると思うので、頑張らない程度にやれることをやっていこうと思います。

特に今回は、今まであまりコミュニティに来ていなかった方々がコミュニティに来てくれるようになることも目指しているので、「これだったら他の地方スクラムフェスの方がいいね」にならずに、少なくとも「今まであまりコミュニティに来ていなかった方々がコミュニティに来てくれるようになる」に関してでエイバスクラムフェス金沢が最高の場であると自負できるようにはしていきたいです。

*1:これはそもそもカンファレンスを通して何を達成したいのかがまだあまり言語化できていないというのも大きいのかもしれません。「なんでスクラムフェス金沢を開催するのか?」に改めて立ち戻っても良いのかなあと個人的には思いました。