天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「やり抜く力 GRIT(グリット)」を読んだ

「やり抜く力 GRIT(グリット)」を読んだので、感想を書きます。

 

読んだきっかけ

RSGT2021keynoteにて、身体性の復権が必要だという話(精神と肉体を別々に捉えることは不可能ではないか?)の中でGRITの話が出てきたので、読んでみることにしました。*1

概要

物凄くざっくりと言うと、何かしらの分野で功績を残したいと思った場合、GRITと呼ばれる要素が大切だという話です。
著者の研究の結果、分野を問わず、功績を残した人の共通点として、GRITが高いことが分かったことを上記主張の根拠としています。*2

  • Guts(度胸):困難なことに立ち向かう
  • Resilience(復元力):失敗しても諦めずに続ける
  • Initiative(自発性):自分で目標を見据える
  • Tenacity(執念):最後までやり遂げる

同時に、人間が"才能"を過大評価しがちな点について警鐘を鳴らしています。*3

GRITに持たれがちな誤解

GRITについて誤解を持たれがちな点について簡単にまとめておきます。

  • 優れた功績を出している人は才能(例えば知能指数)も持っている。ただし、才能よりもGRITの方が功績に寄与する因子として有力である。才能があっても功績を残せない人は多数いる。
  • どんな目標にも粘り強く取り組めばいいわけではない。興味・練習・目的・希望がある目標について努力しないと、粘り強く取り組んでも効果が見られない。
  • 努力が常に辛く感じるようでは粘り強く取り組んでも成果が出せるかは分からない。楽しく感じる状態が長い必要がある。
  • GRITは鍛えれば伸びるが、伸ばし方は注意しないといけない。例えば、エキスパートと初心者の動機付けは違う点、初心者に厳しい動機付けをしても意味がない点、ただ長い時間努力するのではなく"意図的な練習"が必要である点...
  • GRITをどのように高めていくのかについて、ヒントはあるが科学的な根拠はまだ出ていない。
  • やると決めた目標に対して、短期的に物凄い熱心に努力を重ねるのみでは、GRITが高いとは言えない。GRITはあくまでも努力の持続性を評価する。

感想

本に出てくる数々の実験や著名人と筆者の対話が面白かったです。
先天的に備わっている才能よりも後天的に身につけられるGRITの方が、成果を出せるかに強く寄与しているというのは、希望を貰えました。
ただ、主張を支えるための研究結果にトートロジーが幾つかあった点(粘り強く取り組むことができる人は最後まで諦めずにやり切る力がある...)と、結論に至るまでの過程が若干冗長だった点は気になりました。
また、GRITという指標に執着すると、本書でGRITにまつわる誤解として記されているような内容に引っかかりそうなので、注意したいです。

おまけ:自身のGRITスコアについて

自身のGRITスコアを計測した所、日本人の平均値(3.0)でした。
粘り強さのスコアは高いのですが、情熱のスコアが極めて低かったです。
自身の人生哲学がない点や、これまでの人生では取り組んできたことがコロコロ変わっている点からも、ある程度納得感がある結果でした。
自己分析(自身がどういう哲学を持っている?どういう方向性を望んでいる?)や自身と向き合うことを今後してみてもいいのかな、と思いました。

*1:名前は聞いたことがあるがどんな内容なのかは良く分かっていなかった...

*2:例) スペリングコンテストの小学生, ウォーレン・バフェット, マーク・ザッカーバーグ, プロスポーツ選手, ジェフ・ペゾス...

*3:多くの人は才能よりも努力が大切だと言葉上では言うが、深層心理では才能を重視している。同じようなことができる人の場合、地道な努力を積み重ねて現時点の能力を有している人よりも、殆ど努力せずに現時点の能力を有している人の方を評価しやすい