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こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
今回は、いよいよ最後の章(8章 それで?)と、本全体のふりかえりをしていきました。
オートポイエーシス
本書の中では、精神プロセスを論じる過程で「トートロジカルにしてエコロジカル」という単語が出てくるのですが、これはオートポイエーシスの考え方とも繋がっているのではないか?というお話が出ていました。(メカニズムがメカニズムを作ること、あるいは差異が差異を生むこと、という再帰構造が現れている点が一致している)
目的は全体を裁断した結果でしかない
部分を見た結果、何かしらの目的が生まれていることはあり得るけれども、あくまでもそれは全体から部分を裁断した結果生まれているものだよね、という話をしていきました。
人間の人生で言えば、生まれたという事実が起点となり、そこから再帰的に差異が生まれ続けた結果できたその時点での全体について後付けで目的を考えている、というのが一般的だよねというお話も出ていました。
たまに起こる破壊
システムがある程度頻繁にある程度こっぴどく破壊されることや人の死は、全体として見たときには好影響を及ぼすこともあるという話がされていました。
突然変異の話や、チームに起こる大きな変化という観点で共感できる話でしたし、このあたりはここ数年でよく言われている多様性が重要だという話と絡めて考えてみても面白いなあと感じました。
全体を通したふりかえり
順を追って緻密に理論や前提が積み重ねられてきた印象が強く、時間をかけて読んだからこそベイトソンの思考プロセスを追随することができたよね、という話をしていきました。(8ヶ月程度の期間をかけてやってきた読書会でしたが、これでもハイペースだったのではないか?という話も出ていました)
分類とプロセスの記述とを交互に行き来し、論理階型を積み上げていくという構造が、世の中の多くの事象を説明できる凄まじいものだったのではないかという話も挙がっていて、個人的には非常に共感しました。
全体を通した感想
せっかくなので、自分が本を読んで特に強く感じたことを感想として記載しておきます。
参加者の方からもありましたが、すぐに使える本では全くなかったけれど、今後数十年というスパンで考えると、めちゃくちゃ使える考え方が凝縮された本でした。
このタイミングで読むことができたのは本当によかったなあというのが素直な感想です。
部分にフォーカスしようとしがちで全体を見失いがち
部分と全体の話でベイトソンが警鐘を本書で鳴らしてくれたように、どうしても全体を見失いがちだったことに気がつきました。
自分自身を省みると、問題提起自体が誤ってしまっている*1ような状況って、結構あったなあと思いましたし、全体からフォーカスを外して部分に着目しすぎていたなあ...というのは本書を読む過程で強く感じました。
また、これに関連して、「なんでこの機能を作るんだっけ?」「我々はなんでここにいるんだっけ?」と言った投げかけの危うさも実感しました。*2
効果的な学習や発達のためには差異や関係性を見つけることが役に立つかもしれない
ベイトソンが本書で定義してくれていた、「差異を作り出す差異」の概念や再帰的なプロセスの積み上げを見て、主観的な差異を見つけて、その差異をもとに新たな差異を見つけて、その新たな差異がまた新たな差異を見つけて...というプロセスを踏むことが学習や熟達の過程になるという考え方を知りました。
この考え方が現時点で何かすぐに役立てられそうかというとそういう訳ではないのですが、学習の過程や熟達の過程の捉え方を新たに持てたことで、人材育成や教育だったり自身が新しいことを勉強する際にプロセスにより自覚的になることができたり、制御できる変数をこれまでよりも一つ増やせたのかな?と思いました。(半分願望も入っています笑)
ベイトソンの思考プロセス
前提を積み上げていくベイトソンの思考プロセスが、非常に参考になりました。
論理階型を飛び越してしまうことで誤った結論を出してしまうというのは、本書で幾度となく忠告されていましたが、自分自身がめちゃくちゃやりがちだったので、耳が痛かったです。
巷で言われている(?)抽象化/具体化とかロジカルシンキングみたいな話とは全然違う視点で論理のつながりを捉えられたのも、すごく面白かったです。