天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

スクフェス福岡2024の登壇ふりかえり

スクフェス福岡2024で登壇してきたので、今回はそのふりかえりをしていきたいと思います。
いつもざくっとふりかえりするのですが、今回は色々思うところがあり、なるべく丁寧に(発表ができるまでの過程がよりわかるように)ふりかえりしていきます。

スライド

speakerdeck.com

登壇準備編

プロポーザル自体は大分前からあたためていたものでしたし、懇親会などでは一部の人に概要を話したこともあったので、Accept通知を受けた時点でもうすでにほとんど話せる状態ではありました。

ただし、Accept通知を受けた際に現地登壇してほしいという依頼を併せていただき、そこで今回の発表準備の完了条件の一つとして、「現地で聞いていて盛り上がるような発表であること」が追加され、発表準備期間ではこの完了条件を如何に満たすか?を考えることに大部分の時間を費やすことになりました。
盛り上がるの基準は色々あると思いますが、自分は以下のようなことが起きれば盛り上がったと言ってもいいのかな、と思いました。

  • 現地で聞いている人がDiscordで多くのコメントをしてくれる
  • 現地にあるであろうFun/Done/Learnの付箋で自分の話が多く言及される
  • 現地で発表を聞いてくれている人の中で笑いやざわめき(どよめき)がたくさん起きる
  • 現地の人が、交流のなかで自分が発表中に用いたキーワードを発表後から使ってくれる(わかりやすいのであれば「推し活」など)

最初は、とりあえず話せる状態に持っていこう(MVPを作ろう)ということで、「現地で聞いていて盛り上がるような発表であること」は一切考えずにまずはスクリプトとスライドを作り上げていきました。(所要期間 : およそ2日)
この時点の構成としては、記憶力を上げようと思ったきっかけ→記憶力を上げるためにやってきたコツその1(情報収集)→コツ1が有効な根拠→記憶力を上げるためにやってきたコツその2(全部記録)→コツ2が有効な根拠→記憶力を上げるためにやってきたコツその3(その人に関してストーリーを形成する)→コツが有効な根拠→記憶力を上げるためにやってきたコツその4(段階を丁寧に経て話を聞く)→コツ4が有効な根拠→まとめ、という形で、根拠は自分の経験+脳科学の研究を紹介する形になっていました。

次に、このスクリプト&スライドを現地で聞いていて盛り上がるようにリファクタリングしていこうとしました。(所要期間 : およそ7日)
しかし、「していこうとしました」と書いたことからも察されるように、結論としてはまるでうまくいきませんでした。
リファクタリングしたものを何回か推し活をしている友人に盛り上がりそうか?の観点で見てもらったのですが、概ね不評で、「知見はたくさん詰まっているけどキーワード的なものはそれらしきものが多すぎてよくわからなかった」というFBをもらったりしました。
発表に関して事前にFBをもらうことはそこそこあるのですが、不評がこれだけ続くのは初めてで、焦りを感じだしました。
不評の原因も今ひとつ自分の中で腹落ちできる理由がなく、研究や文献紹介の部分はユーモアを挟んだり、皆が思わず発表後に書き込みたくなるようなキーワードを組みんだりすることが難しい上に、研究や文献紹介の部分が発表の8割程度を締めているのが原因だろうと推測しました。(「なるほど興味深い」とはなるかもしれないが現地で聞いていて盛り上がるかは怪しい。また、推し活という単語から連想されるカジュアルさが発表の中で薄い...)

そこで、0から作り直すことを覚悟で、以下の点を改良しました。(所要期間 : およそ6日)

  • 発表の構成を大きく変えることにしました。具体的には、知識や経験をツリーのような構成で整理する発表から、一つの物語として聞けるような構成にすることにしました
  • 研究や文献の理解に頭が持っていかれる可能性があるので、研究や文献での補強をすべてやめました。(福岡は遠征勢も結構いる+Day1で懇親会をして夜遅くまで飲んでいる、という2条件がある中、自分は朝早い時間帯の発表だった)
  • 「推し活」や「推し」がそこそこ強いキーワードになると予想されたので、「推し活」や「推し」の要素を発表の中で強める(「推し」スタンプが当日使用するDiscordサーバーにあった)

この時点の構成としては、記憶力を上げようと思ったきっかけ→「推し活」記憶術の説明→自分が具体的にやったことその1(情報収集)の説明→自分が具体的にやったことその2(聴きたいことバックログの作成)の説明→自分が具体的にやったことその3(ログ形式での記録)の説明→まとめとなりました。
できたものを見せて推し活をしている友人からもう一度FBをもらったところ、かなり評価はよくなったので安心しました。好評なコメントとしては、「健全な狂気が感じられるのがいい」や「推している感じがめちゃくちゃ伝わる」と言うコメントをもらったりしました。一方で、「ただのDS*1な人である感じが強すぎて真似してみようとは全く思えない」というコメントももらいました。

大分よくなったっぽいことに安心しつつ、以下の点はより改良ができそうだと思ったので発表を修正していきました。(所要期間 : およそ10日)

  • 「健全な狂気」をわかりやすい形で表現することで、推している感じをより鮮明に映し出す
  • 元々記憶力が高かったわけではないことをもっとわかりやすい形で説明する(こんな人ができたんだから自分でもできそう、の要素をいれる)
  • ユーモアや突っ込みどころを追加して、狂気を和らげる

修正の大きさは一個前のタイミングでの修正と比べると小さく、やりたいことも割と明確なのですぐに修正は終わるかなーと思ったのですが、予想以上に時間がかかってしまいました。

まず、

「健全な狂気」をわかりやすい形で表現することで、推している感じをより鮮明に映し出す

に関してですが、これはそこまで大変ではありませんでした。わかりやすい形ということでまず浮かんだのが数字だったのですが、自分が推し活してきた記録は手元に残っているので、それを発表に加えればいいんだと思い至りました。

次に、

元々記憶力が高かったわけではないことをもっとわかりやすい形で説明する(こんな人ができたんだから自分でもできそう、の要素をいれる)

ですが、これはかなり苦戦しました。最初は、自分が記憶力が低かった時代のエピソードを話そうかと思ったのですが、エピソード自体は作れるのですが、「いやいや本当に?」「そうはいってもさ」と思われてしまいそうで、どうも説得力が薄い気がしました。
そこで、記憶力を数字で表現することを考え、元々発表の中にいれる予定だった10時間2000文字というのが如何に大したことないかを何かしらの比較(例えば10時間で話される文字数の目安との比較など)で表現しようと試みました。一見すると良さそうだったのですが、他の方が書いているイベント記事では数日にわたって開催されるカンファレンスを2000字とかでまとめるのは普通のことなので、比較対象をその記事においてみると自分の記憶力が元々大した事ないとは思えにくく、断念しました。
そんな中、どうしたものか数日頭をこらした結果思いついたのが、過去の自分のメモでした。初期に作っていたひどいメモを見せて、それがどれだけひどいかというのを自虐的に語れれば、メモが本当にひどい内容でありさえすれば一定共感を得られるのではないかと思いました。「当時のメモってひどいメモなんて残っているかな...」というのだけ不安だったのですが、想像以上にひどいメモがたくさん見つかったので、安心しました。

最後に、

ユーモアや突っ込みどころを追加して、狂気を和らげる

ですが、これはシンプルに自分が苦手なので困りました。
普段自分と接点があったり、過去に自分の発表を聞いてくださった方なら分かると思うのですが、突っ込みどころはさておき、ユーモアをプレゼンや会話に取り入れることは全然ないので、どう取り込んだものか?そもそもどんなユーモアが考えられるのか?が全然思いつきませんでした。
最初の1-2日は途方に暮れていましたが、笑いといえばさとりゅうさんということで、さとりゅうさんに以前紹介してもらった笑いのスライドやさとりゅうさんの笑いに関する分析を参考に、全スライドに対してここではどういうボケが考えられるのか?というのを考えたところ、そこそこユーモアや突っ込みどころが思いついたので、それらを幾つかピックアップして紹介することにしました。
また、上の「元々記憶力が高かったわけではないことをもっとわかりやすい形で説明する」の改善をしている最中に発掘した過去の自分のメモが相当ひどかったので、ここを中心にユーモアを入れていくことを決めました。

こうして9割方発表準備ができたので、最後は最終調整としてスライドをちょいちょいいじりました。(所要期間 : およそ2日)また、記録の仕方の部分に関しては、実際にスクフェス福岡の様子を記載したブログがわかりやすいかなーと思ったので、今回はスクフェス福岡の活動報告ブログをいつも以上に細かい粒度で書き、それをスライドに添付することにしました。
また、リハーサルを何回かしてみて、18分程度で発表が終わるように調整しました。(盛り上げるチャンスにもなるので、質問を受け付けられるようにしたかった)

登壇中

できあがった発表が、これまで自分がしてきた発表とまるで違うスタイルになることがわかっていたので、めちゃくちゃ緊張していました。(少なくともRSGTよりは緊張しました)

会場やDiscordがシーン...となったらどうしようと思って不安になりながら発表したのですが、たくさんコメントしてくれたり皆さんユーモアや突っ込みどころ溢れる部分に反応してくれたので、徐々にリラックスしていくことができました。

登壇後

自分の前に話してくれたミツカワさんの効果がすごくて、皆さんがたくさん一言コメントくださりました。

また、発表直後に5人の方が来てくれて(しかも全員スクフェス福岡で初めてお話した方でした!)、共感した部分や感想、質問をぶつけてくださり、とても嬉しかったです。

また、自分の発表後に「推し活」や「推し」という単語がDiscordで飛んでいたり、ふりかえりで今回のスクフェスで印象に残ったこととして「推し活」や「推し」を挙げてくださる方が複数人いたり、Fun/Done/Learnの付箋に「推し活」や「推し」が複数枚貼られていたのもすごく嬉しかったです。

一方で、情報収集をした話に関しては、情報収集をすごい量やったくらいしか情報がなくてもっと具体的にやったことを聴きたいという話があったので、少しはしょって説明しすぎたかなーと反省しました。(あんまり具体的に説明しすぎると、狂気要素が強すぎて自分が紹介した内容をやってみよう(行動変容を起こそう)となりにくそうだと判断して削っていました)

*1:どうにかしている