天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

SaaSの開発ロードマップ、マイルストーンどう決める?【開発PM勉強会vol.8 オンライン】に参加してきた

peer-quest.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていきます。

会の概要

以下、connpassのイベントページから引用です。

今回はプロダクト・プロジェクトのスケジュールにも大きく影響する「ロードマップ・マイルストーン」がテーマです。
SaaSならではの課題やノウハウも出てくるかも?

本編では様々な業種のPMによるLTを、後半には皆さんからの質問に答えるパネルディスカッションも実施します。

会の様子

個別最適のSaaSと上手く向き合うプロダクトロードマップ~西岡 大揮さん(ヘイ株式会社)~

プロダクトロードマップはやることリストになりがちですが、そうではなくて「ありたい姿」を描いて未来図とすることが重要、という話を起点にして、

  • 実際に「ありたい姿」を描くロードマップはどのように作っていくのか
  • 作ったロードマップをどのように運用するか

という内容を発表してくれました。

まず、プロダクトロードマップの作り方という点ですが、西岡さんは以下の手順でロードマップを作成されているそうです。

1. 施策リストの洗い出し&グルーピング

2. プロダクトビジョンの検討

3. 事業計画/グロースモデルとの整合性を検討

4. ターゲットの優先順位 / バリュープロポジションの検討

次に、プロダクトロードマップを作る際の運用時のコツとして、以下が挙げられていました。

  • プロダクトロードマップからブレイクダウンして、チームのコンテキストに合わせてKPIを設定する
  • 内容を透明化して、エンジニアだけでなくビジネスチームも巻き込む

実際に運用されているプロダクトロードマップの一部を見せていただいたりしたお陰で、イメージがわきやすい発表でした。

エンタープライズSaaSの初期成長戦略~澤井友恵さん(株式会社スマートウィル)~

デジタル接客AIプラットフォームのAICOを実例に、どのように初期成長戦略を描いていったのか、というお話をしてくれました。

AICOでは、顧客との共創を重視しているということで、SaaSで実現したい世界観に共感し、顧客と共に創り出していく姿勢が重要視して、顧客の個別要求に応えながらSaaSで開発すること/しないことを適宜判断しながら、顧客中心で開発を進めているということです。

コンサルタント事業をやられていて顧客との距離が近いことを有効活用している印象を受けました。

急成長なフェーズでの成長戦略~Goto Hideakiさん(株式会社FLUX)~

事業も組織も急成長したことで、意思決定だったり他のチームとの連携や透明性の確保がどんどん難しくなってきて、このタイミングでプロダクトロードマップを作ろうという話が出たそうで、この際にロードマップを実際にどのように作ったかという話をしてくれました。

FLUXでは

1. トップから売り上げ目標が出てくる

2. 課題を細かく分解する

3. 小さく区切った課題のコストを計算する

4. ステークホルダーと最終意思決定をする

の順で課題やスケジュールが決まってくるので、ここで決まった内容に応じて、Qごとに繰り返し見積もりをして精緻化していくというお話でした。

また、ロードマップを実際に作って苦労した点やロードマップを作って良かった点についてもお話をしてくれました。

苦労した点としては、割り込み作業が入ってしまった点やスケジュールの精度が低いことなどが挙がっていました。対策としては、バッファを20%作って、予測不可能な点に対処したということです。
良かった点としては、PdMがドメインエキスパート化したことや、ロードマップを作りっぱなしで終わりにするのではなく運用をしながら洗練させていく、というお話が挙げられていました。

急成長している企業ならではの課題が聴けたので、面白かったです。

アルプのロードマップ変遷~前川裕一さん(アルプ株式会社)~

アルプでロードマップをどのようにして作ることになったのか、という過程をお話してくれました。

アルプでは、元々ロードマップはなかったそうで、ドメインモデリングやDDD, ユーザーストーリーマッピングなどを通して開発をその場で進めていたそうです。
その後、人数が増えてきたこともあってスクラムを導入したものの、リソース効率を重視したこともあってチームが混乱に陥り、カンバン開発に移行したということです。ただし、POがやっていたレビューの負荷が高くなるなど、なかなかうまくいかなかったということです。

こうして試行錯誤した過程を経た結果、開発手法に注目し過ぎじゃないか?という話になり、ビジョン駆動開発という名前の下でロードマップを作り出し、チームごとにオブジェクティブの設定や共通認識の形成を行うようになったということでした。

ロードマップは現在試行錯誤して作っているということですが、ハイインテグリティーコミットメントの考え方を大事にしようと考えているということで、ロードマップがスケジュールの約束にならないように注意しているというお話でした。

失敗談含めリアルな話が多数聞けた上に、ロードマップがどういう経緯で必要だと思うようになったのかという過程の話を聴けて、個人的には非常に満足度が高い発表でした。

パネルディスカッション

質問が多く、一問一答のQA形式で行われました

ロードマップの履歴管理は?
  • 議事録として管理している
  • spread sheet, notionでコメントがついているので、そこで履歴が見える
  • 履歴管理したい目的にもよるが、あまり話題に挙がっていないところは意図的に切り捨てたりしている。
立ち上げ初期は何を根拠にマイルストーンを決めたのか?
  • とにかく作って運用してみて、という感じ。初期はとにかくフィードバックを得ることを重視していた
  • 顧客の要望ベース。受託開発に近いイメージ
ロードマップ作成にどのくらい時間をかけるか?
  • 時間であまり区切ったことはなかった。
  • 話し合いに時間はかかるが、内容が決まってから資料に落とするのは早いイメージ
ロードマップ作成に使うツールは?
  • Miro
  • FigJam
エンジニア出身の場合どのようにビジネスサイドの知識をキャッチアップしたか
  • 顧客との会話
  • システムを作りながらキャッチアップ
PdM/PjMになって感じたGap
  • 顧客の声を全然聴けていなかったと感じた
  • 周りになんでこれをやるの?というのを定性/定量のデータを持って説明すること
一番最初のPdMを誰がやるか?はどう決めたか
  • ユーザーとの接点が多い人
  • プロダクトへのこだわりを強く持っている人

全体を通した感想

それぞれの現場でどのようにロードマップを決めているのか?というのをLTやQ&Aという形式でつまみぐい感覚で聴くことができたので、楽しかったです。

苦労されながらロードマップを作成された経験が幾つも聴けたのがよかったです。