天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「ユニコーン企業のひみつ」を読んだ

ユニコーン企業のひみつ」を読んだので、読んだ感想を書いていこうと思います。

本の概要

以下、Amazonの紹介コメントから引用です。

大規模な成功を収めているテック企業(ユニコーン企業)は、スタートアップで機能していたテクニックをエンタープライズ企業レベルにまでスケールさせる方法を見いだし、日々実践しています。AmazonFacebookGoogleなどは、何万人もの従業員を抱えているにもかかわらず、スタートアップのように働いています。本書はSpotifyアジャイルコーチやエンジニアの経験を持つ著者がユニコーン企業のソフトウェアづくりと働き方を解説します。
ミッションによってチームに目的を持たせ、スクワッドに権限を与え、信頼する。カンパニーベットを通じて大規模な取り組みを調整する。このような働き方とそれを実現するための文化のあり方を解説し、複数チームが連携しながら質の高いプロダクトを早くリリースし、迅速に技術革新を行うための方法を学びます。
プロダクトのデリバリーにフォーカスする世界有数のテック企業の事例を紹介する本書は、デリバリープロセスやプロダクト組織自体を改善したいエンジニアやマネージャー、経営リーダー必携の一冊です。

本を読んで感じたこと

プロダクトのインパクトにもっとフォーカスしたい

「プロダクト作りをより楽しく良いものにしていくために、計画よりもインパクトにフォーカスしよう」という話があり、これははまあその通りだよね、という感じだったのですが、インパクトにフォーカスするために技術を駆使し、チームを支援する重要な役割としてデータサイエンティストを挙げていた点に驚きを受けました。*1
バックログの優先順位づけを代表に、普段からインパクトを重視して仕事をしていたつもりでしたが、集めたデータを学術的に分析したり、本書で触れられているような所まで考えこんでデータを活用することは、自分のチームでは取り組めていなかったからです。
このインパクトの話もそうですが、大事だと感じたものには徹底的にフォーカスをかけて、注ぎ込める限りの勢力を傾倒させるような姿勢が本書を通して印象に残りました。

テック企業は単に優秀な人材を雇っているわけではない

本文中に、以下のような記述があり、本書を通して一番わくわく感を覚えました。

テック企業は単に優秀な人材を雇っているわけではない。優秀な人材を作っているんだ。(略)テック企業勤務の人たちがすぐれた仕事をしているのは、無料のラテやテーブルサッカー台のおかげなんかじゃない。権限が与えられ、信頼されているからこそ素晴らしい仕事をしているんだ。

Googleは勿論優秀な人材を採用しているのでしょうが、それ以上に楽しくいきいきと働けるような仕組みづくりと、社員への権限と信頼があるからこそ、高い成果を上げることができるんだろうな、と思いました。
また、「壊したのは私です」に書かれていた、本番環境を壊してしまった人に対して上司がかけた言葉の話からも、仕組みづくりを大切にしていると感じることが個人的にはできました。

二元論で読みたくなるが...

本の中では、エンタープライズとスタートアップの対比であったり、プロジェクトとプロダクトの対比が度々でてきます。
そのせいもあってか、自分は最初の内は二元論で読んでしまっていて、「エンタープライズは~があるから...」「プロジェクトマネージャーは~だから...」と考えていました。*2
「テック企業は俊敏でエンタープライズ企業は鈍足だ」というくらいの感想で終わらせてもそれはそれで刺激的で楽しむことができるかもしれませんが、「本で語られているSpotifyがどんな背景で今の仕組みを確立したのか」「なんでその仕組みがいいと思っているのか」「仕組みの背景には何が前提条件として置かれているのか」...を考えられると、より楽しく読める本なのかな、と思いました。

全体を通した感想

まず、ファンである島田さん、角谷さんのお二方が訳した本がようやく読めて嬉しかったです。
あとがきでも書いてあるように、肝要な「具体的にどうするとユニコーン企業になれるのか」「組織の文化はどうしたら変えられるのか」という所は、この本には抽象度の高いヒントしか書いていません。
ただそれでも、自分たちが楽しく働けるような環境に変えていきたい、仕事に充実感を覚えて毎日出勤が楽しみな状態にしていきたい、と心から思えるだけのエネルギーをもらうことができた本だったので、読めて良かったです。
Jonathanといえば「アジャイルサムライ」で、「アジャイルサムライ」も読んでいてわくわく感を与えてくれるような本でしたが、負けず劣らず、でもちょっと種類が違うわくわく感を与えてくれたような不思議で楽しい本でした。

*1:「8章 : データから学ぶ」の部分

*2:皆さんが読んでいてあれだけ反応をしていたのに、なんか学びやワクワク感が薄いと感じて、一呼吸おいて自分の理解を書きだしてみて、そこで自分が二元論にとらわれて読んでいることに気が付きました