こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
会の概要
以下、イベントページから引用です。
UX(顧客体験)はビジネスを成功に導く重要な要素であり、多くの企業がUX改善のためのリサーチを実施しています。
しかし、「UXリサーチの効果」を評価するのは容易でないことが、リサーチやリサーチチームのスケールアップを難しくしている現状があります。
本セミナーでは、ユニリーバ、Netflixなどのグローバル企業でプロダクトイノベーションに長年携わり、現在はDoorDashでリサーチヘッドを務めるザッカリー・シェンデル博士が登壇。DoorDashとNetflixでビジネスに変革をもたらした3つのケーススタディをご紹介します。ザッカリー博士は、「リサーチのNorthstar(目指すゴール)は“インパクト”と言われるが、その概念は曖昧である」と指摘し、「プロダクトの改善を通じて、いかにユーザー体験にイノベーションを起こしたのか、ビジネス視点でインパクトを評価すべきだ」と話されています。UXリサーチがどのようにユーザー体験に変化をもたらしたのか、リサーチのインパクトをどのように評価したのか、長年のご経験から解説いただきます。
会の様子
リサーチチームの役割
ユーザーの声を客観的に把握し、ビジネスに変化をもたらし、ユーザー体験にイノベーションを起こすようなインパクトを残すことがリサーチチームの役割だという話がありました。
ここで言うインパクトとは、自分たちのプロダクトの中で、リサーチチームがそのリサーチチームにしかできないユニークな「貢献」*1をすることを指すそうです。
ザッカリー博士の経験の例でいうと、NPSで低い評価だったシステムに対して、Eng metricsやSurvey metricsを計測するなどして、システムパフォーマンスや顧客のペインポイントを探し、大幅なUIの変更を行った(ユーザーが必要なクリック数を激減させた)事例などはリサーチチームが勝ちを出した好例だということでした。
Netflixにおけるユニークな貢献の事例1
例えばNetflixでは、アメリカではオフライン視聴(=オフラインのコンテンツをダウンロードすること)が1%のみのユースケースであることから、オフライン視聴をNGとする方針を会社として以前から公言しており、合理的な決定として注目を集めていたそうです。
しかし、ザッカリー博士のリサーチチームは、インドなどまだネットワークインフラがアメリカほど強くない国ではダウンロードコンテンツの利用率が主要なユースケースになり得ることをリサーチし、オフライン視聴機能の開発をすれば国外のユーザーエクスペリエンスを改善できる可能性が高いことを示し、結果的に現在のような世界的な大ヒットにつながったそうです。
Netflixにおけるユニークな貢献の事例2
Netflixでは、リサーチによって「ユーザーが見たい映画を探すのに苦労している」と言うペインポイントが判明した後、ユーザーが画面のどこをどのくらいの秒数見ているのかトラッキングしたそうです。(「ユーザーが見たい映画を探す」ためにユーザーが映画の説明をじっくり調べていると想定していたため)
しかし、結果的にはユーザーは映画の説明やイメージ映像を1-2sしか見ていないことが判明し、この1-2sでその映画がユーザーにとって興味があるものだという説明ができるようなUIにする必要があると判断することができたそうです。
リサーチチームで働く上で大切なこと
リサーチチームはビジネス上のパートナーたちと強い関係を築く必要があり、エンジニアやマーケティングチームに必要十分な情報を与え続けることが重要だということでした。
そのために、コミュニーケーションを頻繁に取り、テクニカルスキルの向上やビジネス上に存在するコンテキストの把握に常に努めることも大切だというお話がありました。
なお、他のプロダクトと差別化がされた魅力的なプロダクトを作るためには、リサーチチームがリスクを積極的に取ることが重要だということでした。
Q&A
講演の後はQ&Aがありました。以下、質問と回答を一問一答形式で記載していきます。
リサーチ実施の際、検証をするべき多くの仮説の中からリサーチで焦点をあてる仮説をどのように絞り込んでいるか?
はじめにビジネスのゴールを特定する。その後、ゴールがどのような領域に属しているのかを特定する。
そして、このビジネスゴールを達成するのに関わっているステークホルダーとコミュニーケーションを取る中で頻繁に話題に上がる部分は優先度が高いと判断している。
リサーチは経営上のビジネスインパクト視点で判断されることが多い。顧客満足度やNPSは経営上のビジネスインパクトから離れることも多いと思うが、どのように経営上のビジネスインパクトにつなげていくのか?
まずはNPSなどをベースに仮説を立て、ビジネスにインパクトを与えるような変化をもたらせるだけの「貢献」をする。その「貢献」を経営層には説明する。(NPSを伝えるようなことはしない)
NPSは仮説を立てるために重要だと考えており、最終的な意思決定をするものだと思っていない。経営上の意思決定では、数字に一喜一憂した判断ではなく、なぜそのようなNPSになっているのか?という部分から得られるものだと思っている。
UXリサーチによる改善のインパクトが長期的に顧客体験に影響を与える場合、その見込をどのように数値化/可視化するのか?
中期経営計画などを立てている企業が一般的だと思うので、その内容に応じたメトリクスを立てることが多い。
顧客体験の改善というポジティブな評価だけではなく、現状を維持するとどのようなネガティブなインパクトがあるか?という評価もできると思うが、それを計測した事例はあるか?
低いスコアだけ示すのではなく、なぜそのような低いスコアなのか?というのをセットで特定し、「なぜ?」の部分を評価してフィードバックしたことはある。
会全体を通した感想
英語だったのですべてを正確に聞き取れた自信はないのですが、Netflixでザッカリー博士が取り組んだ事例の話を聴くことができたのは特に面白かったです。