こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
会の概要
以下、イベントページから引用です。
様々なサービスが世に生まれる中で「ユーザー体験」というワードがよりフォーカスされる様になりました。当初はデザイナー寄りなトピックとして扱われていましたが、より良い体験をユーザーに届ける為にはエンジニアも協業し、サービスやシステム全体の作り方からユーザーのことを深く考え、チームとしてユーザー体験の向上を目指す必要性があるという考えが広まってきました。デザイナーだけでなく、エンジニアやPdMにとっても重要なテーマになったUXについてForkwell Communityとして学びを届けたいと考えました。 そこで、ForkwellはモデレーターにUXデザイナーで人間中心設計の専門家である羽山 祥樹氏をお招きし、UXについて学ぶ勉強会「UX Study」を企画しました。本シリーズは全4回を予定し、幅広く体系的にUXに関する学びを届けて参ります。
記念すべき第一回目は『UXデザインの教科書』の著者であり、UX研究の第一人者である千葉工業大学教授の安藤 昌也 氏をお招きして、お話をお伺いして参ります。
会の様子
安藤さんの講演
UXとUXDの定義
UXはユーザーの体験(ユーザーの主観)を指し、UXDはデザイナー側の言葉で、ユーザーが最高の体験を味わえるようにすることを指しているという話がありました。
両者は非常に曖昧に捉えられがちで、区別なく使う人もいるため、立場を軸に言葉を整理しておきたいという意図でした。
UXの期間モデル
予期的UX(経験の想像)/瞬間的UX(経験そのもの)/エピソード的UX(経験の内省)/累積的UX(多種多様な利用期間の回想)の4モデルの紹介がUXの期間モデルとして説明されました。
安藤さんは、お化け屋敷を例にこのモデルを説明することが多いということです。*1
また、伝統的な企業ではこのモデルで言うどのUXについて議論しているのかが怪しいことが多く、
サプライズパーティーの企画はUXDか?
サプライズパーティーでは、友人を喜ばせようと一生懸命考えていると言う点ではUXDと捉えることもできるけれど、パターンとして再生産できるようになっているのか?という点ではUXDと捉えることが難しいという話が出ていました。
JapanTaxiの事例
UXDにフォーカスした結果、なんと説明していいのかわからないような場所でもタクシーが拾えることを広告で知らせているJapanTaxi(Go)がすごいと言う話が出ていました。
これは、先ほどのモデルで言うと累積的UXにフォーカスしており、経験的UXにフォーカスしたりエピソード的UXにフォーカスしている競合と比較して大きなストロングポイントになっていると言うお話が出ていました。(機能一覧で見るとそこまで変わりはないのに、シェア率はJapanTaxiがダントツで多い)
このJapanTaxiの事例からは、UXの捉え方をUXの期間モデルで捉えることの重要性がわかるということです。*2
UXとCX
CXは従業員のエクスペリエンスを上げることもスコープに含めた、UXの拡張概念であるという話が出ていました。
サービスを作っている従業員のエクスペリエンスが良くなければサービスを使う顧客のエクスペリエンスも良くならないよね、という考え方から生まれたということです。
製品・サービスの目指すべき目標
自分が作る製品のユーザーは、どういう言葉で他のユーザーに自分の製品を勧めるのか?という部分が、まさに製品・サービスの目指すべき目標になるという話が出ていました。
段階としては大まかに、
- ペルソナやユーザがそもそもよくイメージがつかない
- ペルソナやユーザはわかるがなんというかわからない
- ペルソナやユーザはいて、その人たちが何を喋るのかも想像はつくが、それは自分だけかもしれない(他の人は違うことを言うかもしれない)
- ペルソナやユーザはいて、その人たちが何を喋るのかは開発者の中でも共通認識ができている
くらいの4段階があるということです。
UXデザインの大きな目標
ユーザーの主観的価値というわかりにくい事象を、
これはマーケティングでいうセグメンテーションとは全然違うことで、ユーザーの利用文脈や利用状況を再生産可能なパターン化していることがUXDの目標になっているということでした。
ユーザーモデリングとUXデザインの考え方
価値層/行為層/属性層に分けるある種のパターンとも言えるユーザーモデルが紹介されていきました。
ここでは、こういうことをしたらユーザが喜ぶに違いないという価値層をまず考え、その後にそのユーザーの価値が実現する行動を考えるという順序が非常に大事になってくるということです。
UXD/HCDに関する誤解
ペルソナを絞ってしまったら買ってもらえる可能性がある潜在層が少なくなって売れないのではないか?という批判に潜在する誤解の話が出ていました。
この批判は、
- ペルソナを全員にしてしまうと、機能がてんこ盛りの誰も使わない製品に先祖帰りしてしまう
- ペルソナは一人の人を指していると思っている。(ペルソナはあくまでも状況を定義しており、ペルソナの状況になればパターンとして行動が再生産されるはず)
という点で誤解が生じてしまっているということです。
パネルトーク
以下、パネルトークであった質問とそこに対する回答を常体で記載していきます。
UXを専門とする人が今後どのような業界でニーズが高まるか展望があれば知りたい
難しい質問だが、安藤さんが講演を頼まれた中で一番意外だったのは製薬会社だった。新しい体験価値をデザインする必要性がある業界ではニーズがあると思う。そういう意味ではどんどん開拓の余地があるし、どの業界でもニーズはあるのではないか?とも考えられる。
日系の企業だとUXデザイナーの評価があまりされない印象があるので外資に行こうと考えているのだが安藤先生はどう思うか?
報酬が高いところに行きたいとか評価されるところに行きたいというのはわかるので、行けばいいと思う。
ただ、安藤さんの周りには若い人がUXDを学んで日系企業で何とか普及しようとしている人もいるので、日系企業ではどうしようもない、ということはない。
NPSを安藤先生が好きではない理由は?
NPSは取ることが目的ではない。
ある事例では、NPSごとに取っている理由を見たところ、一番低い点数と一番高い点数の理由が同じだった。(通知機能の体験が最悪な人もいれば最高な人もいた)
ここからわかるように、NPSの数字には意味がなく、NPSの分析をすることに意味がある。で、そう考えるとNPSじゃなくてもいい。
NPSに注目すると、こういう本質に目がいかなくなりがちで、点数だけに目が向いてしまうので、安藤先生は意図的にNPSをお勧めしないと言っている。
UXDのスキルがコモディティ化しそうだと思っている。他の分野のスキルで学ぶものはあるか?
専門家は専門性を自分で磨いていくものなので、コモディティ化するんじゃないか?と言われてもそうなのかな?と思う。
体験そのものを考えていることを専門にする人は絶対に必要だが、そんなにコモディティ化している実感はない。UXDがコモディティ化するというなら、エンジニアもコモディティ化すると言えるのでは?*3
安藤先生の話は大学以外だとどこで聞けるのか?
あまり外に出ていない。Youtubeくらい。
UXデザインを体系的に学ぶ場合どこにいくと良いのか?
デザイン学校とか安藤研でやっているUXロケットとか。UXロケットの方は、UXネイティブな学生が何をやっているのかわかる。
社会人の場合は、10年前に安藤先生が教えた人が社会人になっているので、その人に聞いてみるといい。
UXデザイナーにはどのようにしたらなれるのか?最初にSEになってからデザイナーになる選択肢も考えている。将来的には電子カルテのUXデザインに携わりたい。
やってみたらいいと思うし、電子カルテならデザインすることが全然できる。
UXデザインに興味あるよ、と言いながらSEの就活とかをすればいいのかな?と思う。
あとは、まずUXロケットに参加してもらえるといいと思う。
会全体を通した感想
非常にわかりやすい説明で、面白かったです。
安藤先生の教育を大学時代のうちに受けておきたかったと感じました笑