こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
- 会の概要
- 会の様子
- 野口さんの基調講演
- Q&A
- アジャイルリーダーシップと訳した意図は?(The Agile Leaderが原題のため)
- 日本の伝統的な企業の開発でアジャイルなやり方の浸透はどうすればいいか?
- アジャイルしてよかったことは?
- 忍耐とマーケットへのデリバリー速度のバランスをどう取るか?
- 何もアジャイルを知らない現場に対してどのように文化を醸成させていくのか?(勇気と忍耐は前提として)
- 大企業でビジョンを加速させるためのアイデアがあれば教えてほしい
- アジャイルリーダーシップは一歩間違えると「なんでもやれ、個を捨てる」になるがどういうことを気をつけているのか?
- チームに確固たるビジョンを策定するにはどうすればいいか?
- 書籍ではリーダーを自発的に生まれてくるものとしているのか?
- 現在企業が行っている目標管理とアジャイルリーダーシップの考え方は相容れないものだと思うが、どう考えるか?
- 併読すると良さそうな本は?
- 会全体を通した感想
会の概要
以下、イベントページから引用です。
これまで Forkwell のイベントで登壇されたエキスパートの方々は、先達が記した書籍から「気づき」を得て実践し、振り返り、再現性のある「学び」として身に付けていく中で、実績を築いてこられました。
しかし、日々限られた時間の中で知識や情報をアップデートし続けるのはそう簡単ではありません。 Forkwell Library では、著者・訳者・実践者らを登壇者として招き、そんな思いを抱えた開発者の皆さまが「学びのきっかけ」を得られる勉強会を目指します。
今回の第13回目では2022年11月22日に発売の『アジャイルリーダーシップ』を取り上げます。人を大事にしながら変化に適応し続けるために、アジャイルソフトウェア開発というムーブメントの中で育まれたリーダーシップのあり方を翻訳者である株式会社ユーザベースの野口 光太郎 氏にお伺いしていきます。
会の様子
野口さんの基調講演
「アジャイルリーダーシップ」におけるアジャイルとリーダーシップの定義
本書(「アジャイルリーダーシップ」)におけるアジャイルの定義は、「適応性」であり、「リーダーシップ」とは「権力ではなく影響力を活用できること」だという前提が共有されました。
なぜアジャイルリーダーシップなのか?
本書では目的の重要性が何度も訴えられているということで、アジャイルリーダーシップとはなにか?という話がありました。
本書では、まずリーダーが夢と情熱を持つことから始まるということで、リーダーがこの夢と情熱を実現し変化することで組織も変われるという話が出ているそうです。
アジャイルリーダーシップとは何をすることか?
アジャイルリーダが、組織の文化を育てることがアジャイルリーダーシップだという話がありました。
なお、組織の文化を育てるということは具体的に言うと、個人中心のマインドセットからチームや組織中心のマインドセットに変化させる+指揮命令系統の構造からメンバーが自律的に動ける構造に変化させることだと本書では定義されているそうです。
アジャイルなチームをつくるアジャイルリーダーシップのヒント
アジャイルなチームをつくるアジャイルリーダーシップのヒントとして、以下の6つが講演の中で紹介されました。
- 個人ではなくチーム(個人の欲求は大事だけどチームの単位で意思決定をする)
- 学びのための「誰もが正しい、ただし部分的に」(Zuziさんが専門としているシステムコーチングの文脈だと、誰もが正解を持っていない)
- ファシリテーションからコラボレーションへ(個人の仕事をそれぞれがこなす→お互いに手伝い合う→一緒にやるの順でチームが遷移していく。ファシリテーションが効果的なコミュニケーションになるのはコラボレーションしていない状態でのみ)
- 自律性のためのビジョンと目的(存在する目的がないと完全な自律性はカオスを生み出す)
- 「勇気」の価値(スクラムの価値基準にもXPの価値基準にも両方含まれるのは勇気と尊敬だけであることから、勇気がいかに重要だと考えられているかがわかる。現状を打破し、チームを信頼する勇気が必要)
- リーダーは一歩だけ先を行く(変化を押し付けてはいけない。リーダーが先に進んで導かないといけない)
Q&A
アジャイルリーダーシップと訳した意図は?(The Agile Leaderが原題のため)
本書の内容がリーダーというよりもリーダーシップの内容であるため。
本書の内容を届けたい人を考えたときに、より届くタイトルはアジャイルリーダーシップだと考えた。(リーダーにだけ届けるわけではないため)
日本の伝統的な企業の開発でアジャイルなやり方の浸透はどうすればいいか?
なんでアジャイルにしたいんだっけ?というのをまず考える。
その上で、アジャイルが必要かどうかがわかるので、必要だと感じるのであれば企業に即したやり方で浸透させていけばいい。
アジャイルを説明するときに困ったら、まずは実践してみるのが良いと思う。
アジャイルしてよかったことは?
人月商売をしていると、自動化をすると状況が良くなっているはずなのに企業としては失敗しているというのに疑問を抱いていたのだが、それがアジャイルの考えだと説明がつくことがわかって魅了された。
また、権力*1が野口さん個人的には苦手で、それがアジャイルを使うと良い意味で都合よくなくなることに気がついた。
忍耐とマーケットへのデリバリー速度のバランスをどう取るか?
アジャイルは適応性であるという目的から始めると、長い時間軸で考えたときにはチームが先に向かう必要があるので、どこかで忍耐が必要になる。
本書に書いてある内容だと、忍耐にはかなりの時間が必要だと記載されている。
何もアジャイルを知らない現場に対してどのように文化を醸成させていくのか?(勇気と忍耐は前提として)
リーダーが変わる必要があると今日も話があったと思うが、リーダー自身のふるまいでアジャイルの良さを見せることは重要だと思う。
また、野口さん自身がリーダーとして振る舞うときは、チームが意思決定できるようにぐっといいたいことをこらえる。
大企業でビジョンを加速させるためのアイデアがあれば教えてほしい
本書で紹介されている内容だと、システム・コーチングの文脈で、ふわふわとしたイメージから浸透させていくという話がある。
具体的に実践している内容で言うと、OKRを実施している。
アジャイルリーダーシップは一歩間違えると「なんでもやれ、個を捨てる」になるがどういうことを気をつけているのか?
まず目的から始めるというのはある。
また、没個性化や平均化を目的としているわけではないんだよ、というのははっきりとチームにつなげるようにする。
逆に個人で仕事を意図的に独占してしまうような人がいれば、その人が独自性を失ってしまうと組織に貢献できないと考えてしまっていることを確認し、組織としてそんなことはないよ、という話をする。
チームに確固たるビジョンを策定するにはどうすればいいか?
えーそんな感じ?と思ってしまうようなものであっても、チームが言語化したものを大事にしていくのが重要だと思う。
書籍ではリーダーを自発的に生まれてくるものとしているのか?
アジャイルな組織であれば、自然と生まれてくるものである。個人を指名してその人に強いるということはない。
ただ、育成をしないというわけではまったくない。
現在企業が行っている目標管理とアジャイルリーダーシップの考え方は相容れないものだと思うが、どう考えるか?
究極的にはそのとおりだと思う。
併読すると良さそうな本は?
- Managament3.0
- マネージング・フォー・ハピネス
がアジャイルリーダーシップと相性が良いのでおすすめ。
会全体を通した感想
(パネルディスカッションの方で特に)野口さんの人柄の良さが伺えたのが非常に印象的でした。
なかなか抽象的な質問も多かったですが、野口さんがどう考えるかや野口さんが所属するユーザーベースではどのような文化や実践をしているのか?という話が聞けて非常に面白かったです。
*1:自分がすべて決めてあなたはそれに従うだけ...のような形になりがち