読んでからは少し時間が空きましたが、「人が自分をだます理由~自己欺瞞の進化心理学~」を読んでみて面白かったので、今日はこちらの感想を書いていこうと思います。
本の概要
大分雑にまとめてしまうと、人は隠れた(自分自身でも気が付かない)利己的な動機を持ち合わせていて、この動機が様々な不効率な行動を引き起こしているという話です。
この利己的な動機の存在には、他者は勿論、自分自身も気が付かないように脳がだましているという、衝撃的な仮説をベースにしながら、仮説を支持する根拠が多数載っています。
進化心理学の入門書的な位置づけの本で、断定的な言い回しや学者にありがちな読みにくさが文章になく、進化心理学を学ぶ最初の一冊としておすすめだということです。(byきょんさん)
読んでみて面白かったこと
多種多様な生物の行動や進化の過程
人間に留まらず、チンパンジーやメタセコイアなど、多種多様な生物の行動と進化の過程が紹介されていました。
また、なぜそのような行動をするのか(なぜそのような進化の過程を辿ったのか)が併せて解説されていました。
自分が知らない話や、事例としては知っていたけども背景までは理解していなかった話が多数出てきたので、教養として面白かったです。
人間が取っている不効率な行動の数々
医療や教育...様々なコンテキストで、人間が取っている経済的に不効率な行動の数々が挙げられていました。
どの不効率な行動についても、利己的な動機が隠されている前提で考えると納得のいくものが多かったので、面白かったです。
また、事例の幾つかには、自分自身でも認めたくないけど認めざるを得ない動機も書いてあって、中々衝撃を受ける内容でした。
人が自己欺瞞する時の4タイプ
人は自己欺瞞をする時のやり方として、4タイプ(狂人,忠臣,チアリーダー,詐欺師)に分かれるという話があったのですが、これが面白かったです。
それぞれのタイプのような思考をしている時が、自分自身で思い当たる節があったので、素朴理論として理解できると共に、各タイプごとに、自己欺瞞することでなぜ有利に振る舞えるのかが書かれていて、自分のことを客観視する一つの視点になりそうだと感じました。
また、上手く使えば、置かれている辛い状況を、自分にとって楽しい状況に転換させることもできそうです。
利己的な行動に対して寛容になれた
本書の最後にあるまとめの章で、利己的な動機を自分自身でさえも見えないように隠していると仮定して、この事実をどう生かしていけば良いのかの提案が書いてありました。
本書を読み進めて、素直に書かれている事実を受け取ると、利他的に見えて利己的な行動をしていた自分にがっかりしてしまうのですが(笑)、このまとめを読んで、本書を読んで良かったし、人間であるのだから利己的でもしょうがないかなーと感じました。
例えば、他人が自分の意見や行動に過度に干渉してくることがあった時に、「あれこれ意地悪をしてきている」と捉えるのではなく、「生物の本能的に、力関係を境地ようしたいのかもしれない」と考えることができれば、大分イライラ度合いも抑えられそうだなあと思いました。
全体を通した感想
一般教養として面白い話もあり、衝撃的なデータもあり、読んでいて学びが尽きない面白い本でした。
また、利己的であることをただ肯定するわけではなく、「仮に利己的な動機であっても他者のために行動しているならそれは良いこと」「利己的である性質が人間にあったとして、犯罪や非道徳的な行動が正当化されることはない」と言ったような記述も幾度となくされていて、刺激が強めな内容に対してバランス感覚を崩されることがなく読めたのも良かったです。