天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

マネジメント3.0 - Forkwell Library #43に参加してきた

forkwell.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

会の概要

以下、イベントページから引用です。

第43回目では『マネジメント3.0 - 適応力の高いチームを育むための6つの視点』を取り上げます。

ここ数年ほどの間、DX という追い風や、日本や海外の市場での競争の激化もあり、日本でもアジャイル開発がようやく普及し、定着しつつある状況になってきています。アジャイル開発の実践が進むと、それらのアジャイル開発チームの中で自己組織化や奉仕型リーダーシップをうまく実現することで、開発メンバーの多様な意見(観点)を取り入れてより良い成果を生み出したり、より働き甲斐のあるチーム(環境)を実現できる例が増えていくことが期待できます。 今回は訳者の藤井拓さんをお招きし、ビジネス等の外界の変化への適応力の高い組織(複雑適応系)を育て、運営するためのアプローチであるマネジメント3.0について、自己組織化とマネジメント3.0の関係に焦点を合わしてご発表いただきます。 また、質疑応答では、さくらインターネット研究所 主席研究員のまつもとりーさんにモデレートしていただきます。これまでのマネジメントも含めた視点で、議論を深めていただきます。

会の様子

複雑適応系とマネジメント3.0

組織として変化に適応した成果の出し方を整理しているのがマネジメント3.0であるという話がありました。

マネジメントとしてやるべきことは旧来とそこまで変わらないものの、マネジメントの仕方に大きな変化があるということで、階層型組織→階層型組織+非線形思考→非線形思考という具合に変遷を辿っているということです。

アジャイル開発の「自己組織化」とマネジメント3.0

マネジメント3.0における自己組織化は、アジャイル開発の文脈における自己組織化よりも本来の自己組織化に近い説明をしているということで、計画策定を通じて押し付けることなくシステムにおいて構造やパターンを表しているそうです。

アジャイル開発では代表的なフレームワークとしてスクラムがありますが、なんのためにスクラムをやるのか?という理解が足りていないという問題があるように感じるということで、まだまだ「仕様通りに安くて品質が良いものを作る」ことを目的にスクラムをしているチームが多いということでした。(藤井さんとしては、仮説が正しいか検証をしつつ進路を軌道修正できることに加え、メンバーが対等かつ積極的に会話できることこそが重要だと考えているそうです)

また、スクラムでは、仕組みやロールそれぞれで以下のような仕組みで自己組織化したよい状態を生むようにしているというお話がありました。

  • スプリント計画(委任、計画、目標、確約)
  • デイリースクラム(当事者意識、心理的安全性)
  • スプリントレビュー(動くソフトウェア、フィードバック)
  • スプリントレトロスペクティブ(協働での考案)
  • PO, SM(委任や支援)

マネジメント3.0モデルとその視点

マネジメント3.0のモデルはマーティーと呼ばれるモデルから形成されているということで、今日は時間の都合で

  • 人々を元気づける
  • チームに委任する
  • 制約を揃える

の3つだけ紹介がありました。(ほかはコンピテンスを育む、構造を成長させる、すべてを改善する)

人々を元気づける

自己組織化はあくまでも状態であるからして、それ自体に良いも悪いもなく、マネジメントで情報-イノベーションシステムの歯車を回す方向づけを行う必要があるという話がありました。

そこで16PFなどでパーソナリティを診断したり内発的ニーズを理解し、人々それぞれを元気づけることが重要だということです。

チームに委任する

自分が抱えている責任を委ねるためにデリゲーション・ポーカーを活用するなどし、意思決定のオプションを増やしながら使い分けていくことが重要だということです。

制約を揃える

チームの意見を聴きながら方向性を考えたり、初期条件となるようなパラメータを構成しながらシステムを守ることもマネジメントとして重要だという話がありました。

エンタープライズアジャイル勉強会

マネジメントの方向性という意味では、藤井さんが立ち上げに関わったエンタープライズアジャイル勉強会の話がありました。

エンタープライズアジャイル勉強会では、立ち上げのときにそもそもエンタープライズアジャイルという言葉の意味が違うことが顕在化したということですが、その際には初期パラメータを決めた後に多用なメンバーが議論した結果異なる3つの形が見えてきたということです。

質疑応答

講演の後は質疑応答がありました。以下、質問と回答を一問一答形式かつ常体で記載していきます。

マネジメントとは上意下達の文化醸成が大切だと思っているがこれはマネジメント3.0と似ている考え方なのか?

考えてはいると思うが、文化はマネジメント3.0では強調されていないが、リーンチェンジマネジメントの方では強調されている。

マネジメント3.0ではどちらかというとイノベーションの起こし方にフォーカスが向かれており、文化を徐々に醸成するというよりは大きなジャンプを起こすことが力説されている。

欧米か日本かで自己組織化の難度は変わるのか?

どっちがどっちというのはない。野中先生の知識創造企業は日本から生み出されているという事実はあるが、勝ち馬に乗ったが故に段々大きな変化を起こしにくくなったというのもあると思う。

スクラムだと中長期的なプロダクトゴールを見据えたバックキャスティングが難しいと思っている。どのように対応するといいのか?

誤解があると思っていて、中長期を見据えながら短期的開発サイクルを回していくことが前提。最初に大きなゴールを決めながら、そこのゴールに向かうまでに可能性が高いことは何か?を常に考える必要がある。

SIや受託的な仕事をしている中でマネジメント3.0を実践できることはあるか?

なかなか大きなイノベーションがないと難しいと思う。

受託であれば発注者/受注者二人がアジャイルを理解することが重要。

チームとしてうまく言っているとSMが「調子どう?」しか言わなくなりがちなのだが、それでもよいのか?

相手が困っていることの障壁を消すことを手助けできるのであれば良いと思う。

TOYOTAの「次の道を発明しよう」はマネジメント3.0をまさに取り入れていると思うのだがどう思うか?

ビジョン、心構えが自分たちの中で言語化できているのなら良いと思う。(いきなりこの場で入り込んだ議論をするのは無理)

プロダクト開発以外の運用や外部調整も委任すればいいのか?

難度が違うので分けて考えたほうがいいと思う。その上でチームメンバーの適性などを考えていく。

会全体を通した感想

思った以上にスクラムと絡んだ話が中心だったのは想定外でしたが、マネジメント3.0を実践していく上での障壁や藤井さんの豊富な経験を基にした話が聞けた部分は特によかったです。

マネジメント3.0では、地道な文化醸成というよりも大きなイノベーションを起こすというイメージが近いというのは、特に勉強になりました。