天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

An Year of Agile: リーダーになるということに参加してきた

distributed-agile-team.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

会の概要

confengine.com

こちらのプロポーザルにある話をことねさんがしてくれました。

会の様子

ことねさんの1年間

RSGTからスタートし、福岡→新潟→大阪→仙台→三河ニセコと各地のスクフェスを行脚して濃い一年間を過ごすことができたということできた上に、プライベートでもミカヅキインコを迎えたり仕事でもリーダーを任されたりと大きな変化があった一年間だという話が導入としてありました。

今日は、この仕事でリーダーを任されて試行錯誤した軌跡を話してくれるということでした。

遊撃開発リーダー襲名

まずは会社でことねさんが所属している遊撃開発チーム*1でリーダーを襲名されたときの話がありました。

ことねさんは、リーダーは「どうリードするのか?」が重要だと考えた結果、ことねさんというインターフェースを介して内外からの期待に応えることがリードの一つの方法だと結論を出したということです。
また、チーム外部からの期待とチーム内部からの期待は相反することが多いので、そこをアウフヘーベンしていくことが大切だと考えたそうです。

戦略構築の思考プロセス

上記のように考えたとき、まずはチーム内部チーム外部それぞれの期待を明文化することが重要だと考えたそうで、期待の仲介人としてのリーダーをチーム内部チーム外部の人の視点でそれぞれ以下のようにして定義したそうです。

  • チーム外部の期待明瞭化...自分のマネージャー(CTO)ととにかく会話をしまくって、マネージャーが本当に欲しい物を最低限定義する+組織の状態を把握して組織目標にチームの目標を接地する
  • チーム内部の期待明瞭化...メンバー個々人が抱えているペインを言語化してもらい、それをチーム化によって解決する方法を模索する。同時にことねさんが抱えていたペインをチームに共有し、チーム化によって解決する

そうしてチームで合意したカルチャーが生まれ、苦手な部分をお互いにカバーし合うことを大切にするようになったそうです。

中長期戦略

ここまでができて、ことねさんは水先案内人としてのリーダーにシフトしたそうで、Fearless Changeで書かれていた内容*2を使ったり、ユーザーストーリーマッピングで共通理解を構築したり、成人発達理論を活用したコミュニケーションをとったりしながら、リーダーとしての活動を行っていったそうです。

こうした活動ができたのは、コミュニティの双方向インタラクションが非常に効いたということで、コミュニティに参加することでフランクに悩みを相談することができたそうです。

こうした活動をした後は擬態化したリーダーになり、以下のようなことを行ったということでした。

  • できることはやってくれるイメージを形成するために小さなことをやりまくる
  • 早い段階で首を突っ込むことをしまくる
  • 面と向かって会話をし続けながら課題の解決まで並走する
  • 毎日のふりかえり習慣をつけて悩みを共有する時間を作る
  • できたことを素朴に誇る
  • 得意なタスクを自分からもらいにいく

こうした取り組みを続けたことで、チームは大きな成果が出るようになり、

  • 課題解決件数の増加
  • リードタイムの減少
  • 待ち時間の減少
  • 関わる人同士でのアジリティが向上したようにことねさんが感じるようになった(チーム内外にかかわらず相談ができるようになり、心理的安全性が向上したり、重要な意思決定時期が早くなった)

といった結果を生み出せたということです。

(改めて)ことねさんの変化

RSGTで戦うための大義/武器/仲間を得たことが大きいと最初は思っていたそうですが、今ふりかえってみると、ことねさん的には「戦う」→「向き合う」にシフトできたのが大きい変化だったのかな?と今は思っているそうです。

ことねさんがやってきたことのまとめ

ことねさんがやってきたことのポイントのまとめがありました。

ことねさんは、

  • 各方面に向き合って期待の言語化をする
  • 期待の差分を埋める方法を探る
  • 足がかりは小さくてもいいのでとにかく続ける

を意識してきたことがいい方向への変化に繋がったと思っているそうです。

また、ことねさんは、自分自身をロールプレイングするリーダーだと考えているそうで、ふりかえった結果としてリーダーになっているようなタイプだと思っている話で最後は締めくくられました。

感想戦

大事な前提

今日の発表で話していなかった前提として、「ことねさん自身が無理をしない」ということを何よりも意識していたそうです。(チームから大変に見えるというフィードバックを受けて、方向転換した)

(発表で出てきた)マネージャーとリーダーという言葉の違い

マネージャーはrockyさん(CTO)のことで、ロールの一つとして組織管理をするロールを持っている方だという話がありました。

リーダーはことねさんのことだそうです。(厳密に言うとリーダーも一つのロールなので、rockyさんもロールを持っている)

rockyさんからチームへの期待とことねさんへの期待がそれぞれあったと思うがどうやって聞き分けしたのか?

元々ことねさんがリーダーになる前の前リーダーがrockyさんだったので、rockyさんが元々チームに対して思っていた話とことねさんに対して思っていた話を切り分けて話を聞くようにしたということでした。

gccとegcs

gccは伝統的な開発をしていたそうですが徐々に開発速度が落ちてきてしまい、これに問題意識を抱えたegcsがアグレッシブにパッチを入れていく状態になった結果、egcsがgccに変わってどんどん使われるようになったということです。
その後、gccはegcsのほうが開発がうまくできていることを認め、egcsはgccを継ぐことが決まったということで、組織自体を変えるのは本当に大変なので、良い組織を生み出していく組織になっていくよね、という話でした。

gihyo.jp

アジャイルと人間中心デザインの限界

アジャイルも人間中心デザインも変化をしていくのですが、変化が受動的なものになっており、アジャイルや人間中心デザインが試したいと考えていた「いかに自分たちがジェネレーティブにしていけるか」というのが失われつつあるという話がきょんさんから出ていました。
そのため、もう一度新しい言葉で始めるときがそろそろ来るのではないか?ということです。

関連して、プロアクティブに振る舞って、さらに適切な振る舞うやり方を探しているはずだったのに、いつの間にかただのリアクティブになってるという意見もありました。

会全体を通した感想

ことねさんの一年間の集大成と言えるような発表で、コミュニティとの相互作用を起点にしながら仕事でどのような変化をおこしていったのか?というのが見事に言語化されている発表でした。

感想戦ではきょんさんの質問からここでしかできない話も聞けたりして、講演とセットで贅沢にことねさんの話を楽しめる会でした。

*1:遊撃開発チームは、プロダクトチームが開発にフォーカスできるように非機能開発やバグ修正を行ったりテクニカルサポートやデータ解析を行うチーム

*2:特に小さな成功/ステップバイステップ/ふりかえりの時間/感謝を伝える