天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「はじめての人類学」読書会 第1回(全3回)に参加してきた

anthropology-starting-with-everyone.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

会の概要

はじめての人類学」の読書会です。3回に分けて、書籍を読み進めていく予定になっています。

会の様子

会の説明

やすがひらさんから会の説明がありました。

やすがひらさんが人類学の本の読書会をしようと考えた背景や参加スタイルに関しての話がありました。

自己紹介

ラジオ参加ではない方々の自己紹介がありました。
お久しぶりの方が何人かいらっしゃって、勝手に喜んでいました。

感想の書き込み+感想シェアその1

はじめにの部分と1章の部分に関して参加者で感想を書き込み、参加者全員にシェアがありました。

皆さんが書き込んでくれたScrapboxがあるので詳細な内容の紹介は割愛しますが、様々な学問や他の本とのつながりや、実生活や自分の人生と照らし合わせた感想の話が、聞いていて特に面白かったです。

フリーディスカッションその1

タイラーの進化論の画期的なところ

タイラーは、「未開人」は欧米人とは同じ人間として見られていなかった(自分たちより絶対的に劣った何かとみられていた)当時の考え方を、進化の段階の違いはありつつも同じ人間ととらえたところにあるという話がありました。

今聞けばそれはそうだろうという感じはしますが、当時はダーウィンですら未開人を同じ人間として見られなかったという話が出ており、当時の時代から考えるとかなり新しい考え方で、見方を覆すようなものだったようです。
同様に、動物愛護の考え方もこのあたりから出てきているのではないか?というのも出ていました。

徹底的な深い観察

上記で話したような観察は、メキシコで4ヶ月観察をし続けた結果生まれたものだと考えられるということで、一定以上深く見たところで初めてこれまでみえてこなかった繋がりがみえてくるのかもしれないという話がありました

インタビュー技法

ポロッと話したことこそが重要だよねという話から、インタビューよりもインタビューの後の立ち話のほうが重要だという話になりました。

更に発展させたインタビュー技法として、事前にスクリプトを用意して相互に話をするのではなく、問わず語りと呼ばれている技法(ひたすら相手の言いたいことを聞く)や自分の言葉に置き換えずに判断を保留して相手の話をそのまま聞くテクニック*1がインタビュー技法としてあるよね、という話が出ていました。

似たような話として、ユーザーインタビューする際に用意しておいた質問に関して、自分たちがしてほしい答えのようなものを相手に感じ取られてしまう問題もあるよねという経験談も出ていました。

感想の書き込み+感想シェアその2

2章に関して参加者で感想を書き込み、参加者全員にシェアがありました。

人類学に詳しい参加者の方から親族の捉え方や「フロー」をはじめとした補足や、マリノフスキの生き様から刺激を受けてソフトウェア開発をはじめとした仕事の現場に応用しようと考えるアイデアの話、自分がやってきたことに関して言葉が定義されると理解が進むという話は特に面白かったです。

フリーディスカッションその2

予定としてはフリーディスカッションがあったのですが、2章の部分は皆さんシェアする感想の量が多くて、少なめでした笑

嫌悪や不安という感情

嫌悪や不安といった感情は、自分の安全圏にいると感じなくなるもので、異文化に飛び込むと自然と感じるものだという話がありました。

システム思考との関連

学問は、事実を分析、分類する際にもそれを有機的な全体の中に位置づけ、現実の多様な諸面をいくつかの体系に類別しようと努力したうえで、その体系のどれかに事実を組み込むことを目標としているのである

という記載がありましたが、このあたりの理解はラドクリフ=ブラウンを読んだほうがより理解が深まるという意見が出ていました。

ただ本書では触れられていない部分なので、逆になんで意図的に本書で飛ばされているのかが気になる、という話もありました。

母系社会

母系社会と言っても、相続は男性のラインで起きるのが一般的というのが残念ながら実態としてあるらしいという話が出ていました。

参与観察によって失うもの

鋭いインサイトをもたらす一方で、後から結果が追えなくなってしまったり、統計学などで体系化したほうが受け入れられやすい点は参与観察だと得られにくいものだよね、という話がありました。

データサイエンティストとしての経験がある方からも、Whyはデータだけでは得られないので、参与観察とのバランスが重要だという意見も出ていました。

会全体の感想

最後は参加者の皆さんから一言感想がありました。

皆さん充実した仕事を過ごしていたという話が出ていました。

会全体を通した感想

人類学や関連する学問が好きな方々が集まっていたので、熱気が溢れていて素晴らしい読書会でした。
今回は時間帯が遅めだったこともありラジオ参加でしたが、次回は機会があれば話す枠でも参加してみたいなあと思いました。

あと、自己紹介の部分でも書きましたが、久しぶりの方々がお元気そうにしている様子が見れたのも会の本題とは関係ありませんが非常によかったです。

*1:関連する話として、「こういうことですか?」や「なんでですか?」は聞かずに、相手にひたすら教えてほしいんです、という質問をするようになったという話やシステム思考文脈で「なにがそうさせたんですか?」と聞くようになったという話も出ていました