こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
- 会の概要
- 会の様子
- 会全体を通した感想
会の概要
アジャイルでモダンな技術を身につけたメンバーの育成は、事業会社とベンダー双方の組織的な課題です。
いかにして、チーム開発や、それに必要なモダンな開発技術を身につけてもらうのか。いかにして、アジャイルなマインドセットを体得してもらうのか。 いずれも簡単ではありません。これらに近道はなく、ある程度時間をかけて仕組みづくりをしていく必要があります。
今回は永和システムマネジメント Agile Studio での取り組みから、インターンから入社3年目までの一気通貫な育成システム事例を中心に、アジャイルな教育を組織導入するにあたって必要な考え方やスキルについてご紹介します。
会の様子
Agile Studioの新人育成に対する想い
開発未経験者であっても基礎から教えたり、トレンドに応じたモダンな開発技術に対応したり、アジャイル開発やチーム開発に精通したり、社外にも通用するようなと、かなりチャレンジングな目標をAgile studioでは掲げているというお話でした。
これは、アジャイルで日本の組織を元気にしたいというAgile studioの想いから来ているそうです。
新人教育で重視していること
基礎的な技術力とチームメンバーとのコミュニケーション能力の2軸を基本に、研修を考えているということでした。
具体的な指針としては、
- PJ配属後にどのような言語でも扱えるようになっていること
- 黙読だけではなく、講習会で先輩社員の意見を聞けるような機会が十分あること
- アウトプットの機会を多く設けること
を考えているそうで、スパンとしては3年規模で計画をしているそうです。(最初の1年は座学+体系的な教育+インターンシップ*1+OJTで、残りの2年は教育者として学習する)
具体的なアウトプットとしてはアプリを作っているということで、ガジェットのレビューサイトや社内SNS、掃除番をマネジメントするbotなど、いろいろなアプリができているそうです。
カリキュラム
教育内容としては、以下を教えているということでした。
- Git/Github
- NetWork
- DB
- Java
- アルゴリズム
- JSでGoogle Apps Sript作成
内容は先輩社員の意見をもとに常にアップデートを重ねているということで、前述したアウトプットの時間を増やす取り組みなどは、先輩社員の意見から生まれたそうです。
教育体制
教育体制は、新入社員/メンター/アドバイザー/管理, 運営の4つの立場で構成されているそうです。以下に、立場ごとにどのようなことをしているのか、記載していきます。
新入社員...教育を受ける役割
メンター...新入社員に教える役割。
アドバイザー...ベテランエンジニア。メンターが解決できない課題を拾う。
管理, 運営...Scrum master的な立場
こちらもふりかえりを重ねながら体制の見直しをしているということでした。
知識の復習
知識を定着しているために復習を重視しているというお話が出ていました。
研修後、まずはアジャイルやスクラムの動画を見て書籍と異なる視点で知識をインプットし、その後に先輩社員に対して質問をするような形式を取っているそうです。
アジャイル開発体験型インターンシップ
Agile Japanでも紹介があったアジャイル開発体験型インターンシップの話がありました。
インターンシップでは、名前の通りアジャイル開発を実際に体験してもらうことを目的としており、最初に開発の基礎知識をインプットした後、学生に対して新入社員がついて実際のスクラムイベントを1 Day Sprintで回しているそうです。
インターンによって、学生が会社やアジャイル開発に魅力を感じてくれる上に、新入社員が新人教育をしてくれることで学習を深める効果もあって一石二鳥だったという話がありました。
インターンシップに参加した学生へのインタビュー
インターンシップに実際に参加した学生に対してのインタビューが聞けました。
以下、インタビュー内容を常体で記載していきます。
インターンシップに参加して起きた変化はあったのか?
開発現場に対する変化が大きかった。
黙々と作業するのではなく、コミュニケーションを重視する開発があるんだというのを知れて面白かったし、そういう現場で開発したいと思った。
インターンシップで受けた雰囲気と入社後のGapはあったか?
そこまでなかった。
新人教育で印象的でだった出来事
自由課題をこなしたおかげで自分の技術力にブレイクスルーが起きたので、印象に残っている。
メンターに回って意識したことはあったか?
自身が、先輩社員のメンターから寄り添ってもらって嬉しかった経験があったので、そこを意識してふるまった。
具体的には、実際に課題を自分もやってみて詰まりそうなポイントを見つけるなど。
入社3年目として教育という観点で取り組みたいことは?
新人教育の中で重要だと思っているコンテンツは自由課題だと思っているので、様々な技術を使ったチャレンジングな自由課題をできるようにしたいと感じている。
インターンを受けて実際にGapがなかったという話だったが、プログラミング経験があったからでは?というのは思った。プログラミング経験がない人もGapはないということだったか?
初めてのことが多かったという点ではGapはあったと思う。
なので、Gapが埋められるように技術的な話に加えてスクラムイベントのメリットなど、躓いたり疑問に思いそうなところを先回りしていた。
今後チャレンジしたいこと
今後教育の仕組みづくりとしてチャレンジしたいこととして、
- 現場に入ってからのフォローも充実させる
- 運営, 管理というロールがいない状態で教育が回るようにする
アジャイルな新人教育のポイント
最後にまとめとして、これまでの話を一般化して以下のポイントがアジャイルな新人教育のポイントとして挙げられていました。
- 組織ビジョンに基づいた明確な目標や指針
- メンバーの巻き込み
- 毎年繰り返すことによるカリキュラム改善
- 理論と実践のバランス
- 既存コンテンツの活用
- カルチャーに根差した教育システムの構築
Q&A
以下、Q&Aであった質問と回答を常体で記載していきます。
なぜJavaをコンテンツに入れているのか?
実際扱っている案件にJavaが多いという現実的な理由がある。
新入社員とメンターは1:1か?
基本的にはn:n。メンター全員で新入社員をフォローする。
コミュニケーションはGithubやSlackを活用している。
仲村さん(教育の運営管理者)はエンジニアということだったが、教育プログラムの運営とエンジニアとしての仕事の比率は?
最近は3割くらい教育プログラムの運営をしている。
OJTではモブワーク必須としているのか?
自由課題はモブ必須。OJTも業務知識がない状態から始まるのでモブ必須。
一人でやりたいといえば要望を聞いてくれるとは思うが、モブで教えてもらったほうが早いと思う。
4年目以降の教育方策は?
今回の会のスコープ外ではあるが、方策は立てている。
技術転換というキーワードがあったりするが、これは話が長くなるので別の機会。
ふりかえりや教育のアップデートはいつやっているか?
教育が終わってからすぐにアップデートしている。概要などはどんどんアップデートしており、とにかく早め早めのアップデートを心がけている。
2年目社員への技術スキルアップに向けた工夫は?
基本はOJT。自主性を大事にしているが、新人教育でメンターとしてレクチャーすることだけはやってもらっている。
他にも、技術勉強会が頻繁に開催されているので、そこに参加してもらうような感じ。
会全体を通した感想
教育にもアジャイルを活用している様子が伺えたのが非常に参考になりました。
高頻度にフィードバックをもらうことを意識していたり、採用と育成の連動を狙っている話を聞けたりと、教育を考える際に意識している話が多数聞けたのも良かったです。
*1:教える側の立場で参加