天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます

アジャイルよもやま話 ~ 川口 恭伸さんとアジャイルの歴史を振り返りながら学ぼう !に参加してきた

aws-dev-live-show.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

会の概要

以下、イベントページから引用です。

アジャイルよもやま話は、アジャイル開発に関する「よもやま話」を毎回アジャイル界隈で有名な人をゲストに迎えて、お話を伺うというスペシャルイベントです。アジャイルの歴史から、アジャイル開発プロセスの変遷、アジャイル開発の苦労話やアジャイル開発を長年実践している中で学んだことなど、様々な話を伺いながら、どうすればアジャイル開発をうまく導入できるのかを学びましょう。

今回はゲストにアジャイルコーチとして著名な川口 恭伸さん (アギレルゴコンサルティング株式会社シニアアジャイルコーチ) をお迎えして、アジャイル開発の夜明け前から現在に至るまでの歴史と流れについて語って頂き、アジャイル開発についての理解を深めていきます。川口さんのセッションの後は、AWS の SA も参加してセッション内容について、さらに深掘りをしていきます。どうぞお楽しみに !

会の様子

川口さんのセッション

歴史観

ITバブルが崩壊した2001年にアジャイルマニュフェストが誕生し、リーマンショックが起きた2009年にDevOpsが誕生したという話からまずはスタートしました。

大きなイベントが起きたタイミングで何かしらムーブメントが起きていることを考えると、COVID-19や戦争など大きなイベントが起きている2020年/2022年(あるいは2023年)は、アジャイルやDevOpsのようなムーブメントが誕生する機会になるかもしれないという示唆もありました。

以降では、時系列でどのようにアジャイルが歴史的に築かれていたのか?というお話をしてくれました。

スクラムの源流

スクラムを発明したのはジェフ・サザーランドですが、ジェフが影響を受けたと考えられるものとして、以下のものが紹介されていました。

また、トヨタのミッション(地域→チームメンバー→お客さんという優先順位)や、「予測しようとしたときには一点しか見えていなくても、試行錯誤を繰り返していく過程で見えてくるものがある」というトヨタの思想(by 野中先生の本)にも強く影響を受けているというお話もしてくれました。

スクラムの実現に必要な文化変革

上述したスクラムを実現するための条件として、中央集権型(コマンド&コントロール)を打ち破る文化にシフトしていくという流れが必要だとジェフ・サザーランドが提言したという話をしてくれました。

これに追従するような形で、Googleがマネジメントの撤廃をしたり、クロスファンクショナルチームに注目が集まるようになったりと徐々に開発プロセスに変化が訪れ、日本でもトヨタでがプリウスを超短期間で製作した事例(4年→15ヶ月)が誕生したという事例も出てきたそうです。

経験主義プロセス制御

進化生物学で語られているように、不確実な状況に対処するには経験主義プロセスの制御が求められ、経験主義プロセスの制御のためには自己組織化されたチームが必要だというお話がありました。

ソフトウェアの品質とは?

30年前はソフトウェアが動いていれば品質が十分だったけれど、現状は変更容易性が十分でなければ高い品質だとは言えない、というお話が出ていました。

また、これらのソフトウェアを作る人間を中心に考える必要があるという話も、徐々に出てきたということです。

コミュニケーション手法とアジャイル

人間を中心に考える流れから、効果的なコミュニケーション手法が注目されるようになり、ここで相手へのリスペクトや自己組織化したチームというのがアジャイルソフトウェア開発宣言という形で出てきたというお話がありました。

棄却されるアジャイル

その後(2000年代)は、しばらく企業でアジャイルが広められない、システム開発をよくわかっていない人がアジャイルの思想を棄却する、という時代が続いたそうです。*1

DevOpsの誕生

このあたりで、Dev VS Opsという構図とそれに伴う変化に弱い組織が問題視されるようになり、

  • 自動化されたインフラ
  • 共有したリビジョン管理
  • ワンステップビルド
  • 小さく頻繁に変更をデプロイ(フィーチャーフラグ)
  • メトリクスの共有(経営も含め全員が同じ状態を知ることができる)
  • IRCとIMロボット(ログの集約)
  • リスペクト
  • 信頼
  • 失敗を防止するのではなく、起きた時のことを考える
  • 相手を非難しない、自分ごとで考える

が提案されたという話がありました。

これが提案されたのは2009年なのに、今でも刺さるのがすごいよね、というお話でセッションは締めくくられました。

パネルトーク

セッションの感想

まずは福井さんから、セッションの感想として、AWSでやっている内容や大切にしていることと驚くほど一致しているのが面白いという話が出ていました。

今回のセッションのような話をしたときにありがちな反応

川口さんが今日のセッションのような話をしたときに、現場からどういう反応がくるのか?というお話をしてくれました。

反応としては、「いや、そこまではやりたくないんだけど...」「一人で仕事したい気持ちがあるんだけど...」という話が多く出るということです。

開発者じゃない人は特に、ソフトウェア開発の認知をシステム1の状態に留めておきたいのが、こうした反応を引き起こすのではないか?という推測も出ていました。

ビジネスで如何に価値を出すか?というのをトップダウンから浸透されることが重要だと思うが、トップの方はコーチング時にどういう反応をされることが多いか?

ケースバイケースではあるものの、トップというよりは現場の人から要望をもらうことが多いということでした。

その上で、どこかのタイミングで実践していない人が出てくるので、社内政治だったり説得の仕方をコーチングすることが多いということです。

ただ、COVID-19になってからは、今日話したアジャイルやDevOpsの話を理解できている経営者の会社が大きく伸びている印象があるということで、徐々に変化の兆しが見えているというお話も出ていました。

権限移譲

権限がない(=お金が使えない)状態の時に、そういう状態に立ち会った人たち一人一人がどう向い合っていくのか?というのが非常に重要だというお話が出ていました。

テスラの凄さ

製造業でアジャイルを実践しているのはすごいというコメントから、テスラの事例について話をしてくれました。

テスラでは会計も全てDevOpsになっている上に「会社のお金を使うこと」が指標として定義され、お金を使ったことで失敗したことは何も問われない、ということです。

会社レベルでDev/Opsが分かれている場合の対応

今すぐに変えられないのは仕方ないとして、10年後今から何も変わっていないというのはまずいよね、という話をすることが多いということです。

ただ、現状はこそこそアジャイルを導入したりする現場は少なくなっている上に、コーチングの機会や実践者の数はどんどん多くなっており、ソフトウェア業界の環境としては全体的に良化しているのではないか?という話も出ていました。

分散チームが増えた中でアジャイルを実践するのが難しい

リモートでもオンサイトでも両方仕事ができる、というのが重要だと思うというお話でした。

なお、XP祭りでアンケートを取った時、半分の人は「アジャイルを実践しやすくなった」半分の人は「アジャイルを実践しにくくなった」という回答をしたそうで、アジャイルを実践している人たちの変化に対応する強さを実感したということです。

会全体を通した感想

(ブログで表現しきれていないのは自分の力量不足ですが)川口さんのセッションはいい感じの雑さがありつつもしっかりと重要なポイントは押さえてくれている上に、ところどころで力強いメッセージがあり、最高でした。

後半のパネルトークでは、アジャイルコーチを数々の現場でされている川口さんだからこそ話せる話題も多く、これもまた面白かったです。

*1:ここは今回のセッションでは時間の関係もあってサラッと紹介されるだけで終了しました