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こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。(15 分くらい遅れての参加でした)
会の概要
以下、イベントページから引用です。
競争力を高めるためにDXや開発組織の内製化に取り組まれている企業は多いですが、組織の立ち上げ時にはさまざまな壁に直面することもあるかと思います。 そこで、日本を代表する企業の中で自らDX組織を立ち上げられた、三菱商事グループのエムシーデジタル株式会社 CTO 久保長様、ミスミグループの株式会社DTダイナミクス 代表取締役社長 道廣様にご登壇いただきトークセッションを実施いたします。
DXを推進する会社として組織を立ち上げる際に生じた、周囲とのコミュニケーションやエンジニア組織作りでの苦悩や乗り越え方などリアルな体験談をお話しいただきます。
会の様子
内製組織立ち上げの経緯
- DTダイナミクスさんは、受発注の関係で開発ベンダーとやっていくというよりは社内のエンジニアが攻めていく必要があるよねという話になり、良いエンジニアが働きやすい文化や良いエンジニアが仕事しやすい制度に特化した組織を立ち上げようという経緯で内製組織を立ち上げしたそうです。また、機動力を高めてアジャイル開発をしやすい土台を作りたいという狙いもあったということでした。
- MC DIGITALさんはデジタル戦略部という部ができたことがスタート地点で、そこから商社の文化とエンジニアの文化の違いに対応するために内製組織を立ち上げたということでした。ただし、コミュニケーションは密接に両社で取るようにしているということでした。また、採用プロセスをエンジニアに特化できるという狙いもあったそうです。
組織設計のポイント
- MC DIGITALさんはスタートは一人だったということですが、データサイエンスに関するニーズが2019年当初から高まっているのが分かっていたため、外部のコンペで優秀な成績を納めている人に声をかけたり、社員にコンペへの参加を奨励するようにしてきたということです。こうして少人数で会社の土台を作った後は、スキルの整備を行いながら、「エンジニアの日」を作ったりと社員のエンゲージメント向上に向けた取り組みを進めたということでした。また、採用に関しては尖ったメディア(atCoderやKaggleといったメディア)を中心にPR活動をしたり、ポテンシャル採用を進めたりしたそうです。
- DTダイナミクスさんは、責任分界点が明確になりすぎないことに注意したそうで、非効率なお客さんの作業を取り除いていくというビジョンを共有したうえで、本社の方と連携を密にとるようにしたということでした。採用に関してはかなり苦労もあったそうですが、ビジョンへの共感を中心に人を集めたのはよかったということです。また、お客さんに対面して話を聞くという取り組みも積極的にやっていったということでした。
開発生産性の捉え方
- DTダイナミクスさんは、Jiraなどで基本的な指標は見ているものの、ニーズをどれだけ早く満たせているのか?という部分に関する滞留ポイントを特定できるような指標を定量的に取得しているようにしているということでした。ただし計測難度が非常に高いので、過度に複雑にし過ぎないことは意識しているということでした。
- MC DIGITALさんはJiraやFindy TeamsによるFour Keysといったメトリクスを取得しつつ、マージまでの速度が長いPRなどを具体的に話せるようにしているということでした。また、言われた通りに作るのではなく課題を解決するためのシステム設計や開発ができることをかなり重要視しているということです。
現在、開発組織において優先度が高いこと
- MC DIGITALさんは、特に電力や人事の領域に関して親会社を超えて価値提供することがまずは挙げられるということでした。次に、昨今進化が目まぐるしい生成AIに関して、汎用型の大規模モデルを活用して、便利になる業務を強化していきたいと思っているそうです。最後に、なんだかんだ採用が重要ということで、今会社にないエンジニアリングマネジメントといった力を蓄えていきたいということです。
- DTダイナミクスさんは、中国との連携が非常に良かったと感じることも多くあったそうで、海外との共同開発を推進していきたいということでした。また、アジャイルシフトに合わせて開発体制やプロセスを整備したいということで、サービスの負債が徐々に溜まっていくなかでアーキテクチャ再考などが早期に回せるような環境構築を目指しているということでした。最後に、アジャイルで素早くデリバリーしていくような人材を採用していくことがやはり重要だと考えているという話もありました。
Q&A
パネルディスカッションの後はQ&Aセッションがありました。
以下、質問と回答を一問一答形式かつ常体で記載していきます。
開発生産性に関する取り組みを非技術者に説明するための工夫は?
- Jiraなどで重み付けをして、開発生産性を意識してからどれくらい効果が変わったのか?というのを数字で示している。特に滞留ポイントを見るようにしていて、こういう部分がどれくらい滞留が早くなったか?というのを話したり、障害対応時間のBefore/Afterを提示したりしている。
子会社が親会社のベンダーにならないようにしていることは?
- 月並みの回答にはなってしまうが、経営者の理解はとても大切だと思っている。また、最新の技術トレンドなどを伝えながらそこからの事業展望を話してもらうようにしている。
内製だからこそ話せるようなテーマはあるか?
- 最上位(親会社の経営者)の人たちと関わりながら、どうすればよりよいものが作れるのか?という話ができること。OpenAIのモデルが出た時にそれをどう使うかをクイックに話せたり、SaaSのコンバウンド戦略の話ができたりしている。
生産性への意識付けは採用時から大切にしているのか?
- 採用時のほうが重視している。テクニカルドキュメンテーションは国語力が求められていると思っているので、採用した後に育てるのが難しいと考えているため。
親会社のビジネスニーズにマッチする開発を行うためには何が課題でどのように対処しているのか?
- 製造業に向けて何を出していくのかってビジネスのドメイン知識も必要になってくると思うので、顧客会議に同行してもらうようにしたりWeb会議で同席したりしている。また、展示会などでプロダクトを触ってもらう機会を大切にしている。(意外と自分のプロダクトの説明ができないことが分かったりする)
会全体を通した感想
採用に関して創意工夫をして一定の成果が残せているのにもかかわらず、やはりまだ採用がkey pointだと話があったのは非常に印象的でした。
大企業が子会社を立ち上げて、具体的にどのようなコラボレーションをしていくのかという実例が聞けるのはなかなか貴重な機会だったので、勉強になりました。