天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

ふりかえりカンファレンスで熊平 さんのkeynote(「リフレクション」って何?)を聞いてきた

ふりかえりカンファレンスに参加してkeynoteを聞いてきたので、その様子を書いていこうと思います。

retrospective.connpass.com

リフレクションの定義

「自身を客観的かつ批判的にふりかえる行為」をリフレクションとして定義するという話がありました。

リフレクションが必要になってきた背景

前例がある時代は、計画偏重でPDCAモデルが重視されてきましたが、前例がないことが求められる時代になったことで、経験が重要なAARモデル(行動→リフレクション→見通し)を高速に回すことが重要になってきて、その文脈でリフレクションが重要視されるように鳴ったという話がありました。

また、これまで結果に対して行ってきた「反省」ではなく、経験や得た学びに注目する「リフレクション」が重要視されるようになってきたということです。

メタ認知とリフレクション

「認知していることを認知する」メタ認知は、意見/経験/感情/価値観の4点セットを活用することで高められるという話がありました。

人々は過去の経験により形成されたものの見方でものごとを捉えるため、同じ情報に触れても同じ意見を持たないということです。

内発的動機を引き出すリフレクション

人の創造力を高めるためには、クリエイティブ・テンション*1を高める必要があるということで、そこにリフレクションが使えるということでした。

ビジョンと現状とのGapを埋める動機の源は、仲間と一緒にプロジェクトを成功させた時などといったやりがいを感じた理由であるということで、小さくてもよいので個々人で動機の源を探求することが重要だということです。(Googleの「情報へのアクセスは民主的であるべき」はまさに動機の源)

主体性のアップデート

これまでは、他人から求められていることに対して積極的に動けることが主体性として定義されていましたが、これからは自分が必要だと思うことに対して積極的に動くことができる主体性が求められているという話がありました。

感情のメタ認知

自身の主体性を見つけるためには、ネガティブな状態でネガティブな感情に対してメタ認知をすることができるとよいという話がありました。

ネガティブな感情は自分自身の「願い」に基づいて起きるものが多く、認知としてもポジティブな感情よりもはっきりとしているため、メタ認知の良い機会になるということです。

感情はおろそかにされがちですが、感情は自身の価値観の認知に先駆けて身体に出るものなので重要だということで、前に紹介された意見/経験/感情/価値観の4点セットが活用できるということです。

ビジョンを語る

ビジョンを語る際、何をどのように実現したくて、メンバーに対してどのような期待を持っているのか?で語られることが多いですが、それはビジョンを語っているとはいえないという話がありました。

ビジョンを語る際には、どうやって実現するのかよりも、なんでそれが必要なのかや、それに関連する経験や感情といったパーソナルストーリーを語ることが大切だということです。

MVVにもあるように、ミッションは共有してそれを行動計画に落とし込み、学びのサイクルを回していくということが重要だということでした。

経験から学ぶリフレクション

経験学習サイクルは非常にシンプルな一方で、質の差が非常に出ていることが気になるという話がありました。

そこで、質を担保するために、想定していた結果と実際の結果を計画(行動計画/仮説), 経験(経験/感情), 学び(経験からの学び/法則の定義/行動計画)の3観点からふりかえることが重要だということでした。

また、質を測る指標として、レベル1は出来事や結果、レベル2は他者や環境、レベル3は自己の行動、レベル4は自己の内面になると捉えることができるということでした。

ダブルルーム・ラーニングとアンラーニング

ダブルルーム・ラーニングは、個々人が持っているメンタルモデルを前提から疑って軌道修正することであるという話がありました。

また、アンラーニングは、アインシュタインの「問題を起こしたときと同じ思考では、その問題を解決することはできない」という言葉にある通り、過去の体験をもとにして形成されたものの見方を変えることだという話がありました。(過去の体験を否定したり消したりする必要はない)
アンラーニングしているときは、新しい物の見方に自分を変えるかどうかという選択をする際が一番大きなストレスとなるため、行動を変えないなら変えないではっきりと選択しておくことがおすすめだということでした。

対話にリフレクションが欠かせない理由

対話は自己内省して評価判断を保留して他者に共感する聞き方と話し方をすることであるため、意見/経験/感情/価値観の4点セットでリフレクションをすることで自己の内面をメタ認知し、内省と共感を起こしていくのが重要だということでした。

また、

  • 個々 × 創造&変化 = 対話
  • 個々 × 現状維持 = ディベート
  • 一体 × 現状維持 = ダウンロード
  • 一体 × 創造&変化 = 共創

だという整理がありました。*2

Q&A

講演の後はQ&Aがありました。以下、質問と回答を一問一答形式かつ常体で記載していきます。

自分たちの会社で掲げられているChange to Changeはアンラーニングと同じなのか?

Change to Changeがよくわからないのでなんともいえないのだが、似ているような気がする

チームメンバの主体性を高めるためにできることはなにか?

まさにチームメンバーのリフレクションを促すことが重要だと思う

アンラーンでは価値観のアップデートがあると思うがこれは無闇にやっていいものではないと思えるのだが、やったほうがいいかどうかという基準はあるのか?

何か誰かに言われているからアンラーンする、みたいなのは奨励できない。
この状態に自分は合わないな、と思った時、「なにをなぜ今手放したいのか?(なぜ違うものを横におくのか?)」というのを考えることが重要だと思う

全体を通した感想

ふりかえりは勿論ですが、想像以上にアジャイルスクラムとのコネクト要素も多かったのには驚きました。
自分もそいうですが、Discordをみていても皆さん自身のいろいろな体験や経験に繋がってくる話が多かったので、そこでもコネクト要素があったのも非常によかったのかな、と思いました。

一方で、個々のトピックがどのようにコネクトしているのかや、個々のトピックが有益な背景や理由付けが今ひとつ腑に落ちない部分もあったので、リフレクションをしてもう一度見直そうと思いました。

*1:ビジョンと現状とのGapを埋めること

*2:ただ、一方的に話すkeynoteはダウンロードで