こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
- 会の概要
- 会の様子
- 会全体を通した感想
会の概要
今回の第38回目では、『GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ』を取り上げます。 本書は世界最先端のリモート組織を実現するためのノウハウを、GitLab社が公開している「GitLab Handbook」をベースにしながら解説している本です。
リモートであってもパフォーマンスを出せる組織とはどんな組織文化を持ち、どんな取り組みを行ってきたのかを学んでいきましょう。 今回は著者の千田和央氏、そして、事例講演として株式会社ゆめみの片岡俊行氏をお招きし、GitLab社の取り組みをどのように落とし込み、
また、エンジニアはその中でどんな役割ができるかを実践をベースにお話いただきます。
会の様子
GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた」の読み解き方ーなぜリモートワークは難しいのかー
プロセス・ロスへの対応
GitLubはどうすればすべての人のパフォーマンスを最大限に発揮できるのか?ということを考えている印象があるそうで、プロセス・ロス*1の研究で言われているようなチームで働くことによるパフォーマンス低下に対してどのように対応するのか?というのを徹底的に考えているそうです。
オフィスではプロセス・ロスの原因になる明瞭さの欠如が起きにくいため、リモートワークでは本書に書かれているドキュメント化などの方法を通じて、明瞭さを確保しているということでした。
人間の認知
GitLabは人のパフォーマンスを向上させるために人間の認知をハックしているそうで、その説明がありました。
人間の認知は、社会文化/組織/対個人・グループ/個人/遺伝子といった5階層で多層的に構成されているそうで、多様な正しさを認知する性質があるそうです。
また、認知の特徴としてバイアスが複数あるということも挙げられており、その一部として帰属バイアスや確証バイアスが紹介されていました。
上記の認知特徴によって、論破などをはじめとしたマネジメントを失敗させるような行動が出てしまうということで、GitLabでは共通の目標に向けた行動を取ることでこのような行動を抑制する仕組みを持っているということです。
より「わかり合う」ために〜前向きな意図の想定〜
GitLabで「わかり合う」ために紹介されている方法として、スティールマン論法と呼ばれるように「相手はベストを尽くしている」という前提に立つことが重要だという話がありました。
GitLabから学んだゆめみの「オープンハンドブック」
ゆめみでリモートワークが導入されたきっかけ
社員に世界一周旅行をしたいというメンバーがいたそうで、そのメンバーが世界一周旅行をするためにしばらく会社を辞めることになるくらいなら、リモートワークを導入してみようと考えたことがきっかけだそうで、そこからリモートワーク先端企業宣言をはじめとしたものをし始めたそうです。
リモートワークハンドブック作成のコツ
リモートワークを推進するためにリモートワークハンドブックを作ったそうで、その際に使えるコツの紹介がありました。
- 情報の正確さと信頼性を上げるためにSSOT(Single Source of Truth)を大切にする
- すべての情報をハンドブックに凝集させる必要はないという前提に立つ
- 自分なりのメモをまずはオープンする
- オンボーディングに関わる情報をまとめる
- 採用に関わる情報をまとめる
- 情報の正しさの定義をする(例えば、迷ったものに使うような情報=ガイドラインとして定義するなど)
- GitLabと同様にレビュープロセスを導入している
Q&A
講演が終わった後はQ&Aがありました。
以下、内容を一問一答形式かつ常体で記載していきます。
フルリモートでドキュメント整備をしているのだが、ドキュメントの検索性が低い。どうしたらいいのか?
- 構造化をしていく。3stepでたどり着けるようにする。将来的にAIで検索できるようになっていくはずなので、markdownなどで構造化することが重要だと思う。Excelは構造化できないので最悪
- READMEやリンク化していくことが重要
気づいたときに気づいた人が構造化していくというのはハードルが高くも感じるのだがどんなことをしていくとよいのか?
- 「ぶっちゃけこの情報って使えないかもしれないですが自分にとってはこれが限界です」くらいの情報も公開することでTruthnessを確保する
- 習慣化が重要。そのためには、やったことが褒められてやっていないことが普通に指摘されるような状況を作り上げていくことが重要だと思っている
- イノベーション理論を参考にする。アーリーアダプターばかりのときはアーリーアダプターをとにかく称賛する。キャズムが訪れたときはインセンティブを充実させる。次にレイトマジョリティを動かす際には同調圧力をかける。最後のラガーはペナルティを与える
ドキュメント作成後のメンテナンスをどのようにやるとよいか?
- 情報更新の必要性を感じた人が更新するようにしている(教えてもらってありがとうをドキュメントで返す)
- Notionのコメント機能を活用する。プルリクみたいな仕組みがあるとより活性化できるな、というのは実感としてある
- 構造化をしてスペースを作る
- クオーターごとに、メンテナンスするタイミングを作った
組織がドキュメント化をスタートするために必要なことは?
- 偉い人を巻き込む
- 草の根的に始めてメリットを啓蒙する
リモートワークにすると帰属意識が高まりにくいと感じているのだがどのようなことをしているのか?
- 一年に一度は全員集まる
- 対面の2週間=リモートの3ヶ月と計算して、コミュニケーション設計している
- チェックインで自己開示する
- 自分が仲間だと受け入れられる実感を作る仕組みを構築する
- 会社が儲かっている状態であることを目指す
会全体を通した感想
話題になっていた本ということもあって、本の内容紹介がメインになるかと思ったのですが、本の内容紹介とはだいぶ異なるスタイルで、良い意味で期待を裏切られました。
Q&Aの1テーマに対する深め方が普段とぜんぜん違うアプローチで面白かったです。
また、れいっちさんのキャラの濃さが想像以上でしたw
*1:明瞭さの欠如によって引き起こされているもの。無意識に他人にあわせてほどほどのパフォーマンスで満足する、人によって情報が異なる...