なぜイノベーションは起こらないのかを読んだ
献本いただいたこちらの本を読んだので、印象に残った部分や感想を書いていこうと思います。
(読書感想ブログを書くときは自分はいつもこのスタンスですが)ぜひ実際に手にとって読んでほしいので、書籍の中身にはあまり触れないように意図的にしていますが、記載していない部分も含めて示唆に富む箇所が多く、素晴らしい本でした。
本書を特におすすめしたい人
プロダクト開発をしていてそのプロダクトに対して真摯に向き合っている人なら誰もが楽しく読める本だとは思いますが、リーン・スタートアップやRunning Leanなどを読んで現場で書籍の内容を一定実践している人は特に楽しく読めるだろうと思いました。
自分自身がまさにそうだったのですが、実践されている方と話をすると、BMLループを回したりユーザーインタビューを計画したりする際に、"ユーザーの声"に惑わされたり自分のバイアスを強化する取り組みをしたりしてしまっていた経験は割とあるあるだと思っていますが、本書ではそうした経験が起こるメカニズムが解説されているため、参考になるかと思います。
本書で特に印象に残ったトピック
3タイプのイノベーションとリーダーシップ
3タイプのイノベーションが紹介されており、それぞれのイノベーションが乗り越えるべき障壁やそれぞれのタイプが有効なシチュエーションの説明がありました。
イノベーションと一口にいってもきっかけやイノベーションの型としては意外と種類があって自分がどのイノベーションを軸に考えがちなのか?というのが分かった(=選択肢から手癖で削りがちなやり方が分かった)というのが有用だったのですが、これに加えて、乗り越えるべき障壁の話がその場面で取るべきリーダーシップの話にもつながっていて、面白かったです。
書いてしまいがちなよくないビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスを書いてみるときに、とりあえず書いてみよう(とりあえず全部埋めてみよう)とするとバイアスにまみれたものができあがってしまうことが自分の場合は多かったのですが、これがなんでか?というのが実例や理論とともに説明されていました。
そのため、「バイアスに気をつけて書く」位の解像度でしか捉えられていなかった今までと比べてより具体的にどういう点に気をつけるのか?のセルフチェックがしやすくなりました。
読んでいて個人的に好感がもてたポイント
人のバイアスに焦点を当てているということもあり、全体を通して言い切りだったり論理がつながっていなくても説得やナラティブによってごまかすみたいな部分が非常に少なかったのが読みやすかったです。あくまでも運が良かったという記載がされていたり、ここはどうすればうまくいくのか言語化がまだできていない、という記載があったのは自分の中では良い意味で驚きました。
特に、本書のように科学的なエビデンスをもとにした主張などが少ない本は、筆者の主張を通すためにストーリーや説得を使ってしまうこともあるので、より好印象でした。
また、実例の中ではただ結果を示すだけではなくイノベーションに失敗した部分も含めて過程を詳細に書いてくれていたので、話が飛んだような気がして立ち止まったり前のページに戻ったりするようなことも少なく、その点も読みやすかったです。
また、IBMにおけるイノベーションの実例(失敗も成功も含む)の話はエンジニアとして働いたことがある自分にとっては楽しく読めましたし、技術のあり方に関して見つめ直すよい話になりました。
すっきりした翻訳
平易な本という訳ではないですが、間違いなく読みやすい本ではありました。
原著が海外の本に関しては必ず原文とセットで買って気になる部分は見返すようにしているのですが、文章が読みにくくて見返すような箇所は今回一箇所もなくて、ページ数が200ページ程度とはいえここ最近そういった体験はできていなかったので素直に驚きました。
こちらはbonotakeさん+レビュワーの皆さんの力が集結されていることで実現したさすがの翻訳という感じでした。
おまけ(誤字発見)
このブログで書くことなのかは疑問ですが、P59に一点だけ誤字を見つけたので書いておきます。(明示的に"not not"の推論ををしたわけでも...)