天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

Agile PBL祭り 2025に参加してきた

agilepbl.org

こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

スポンサーブース設置&到着

今回は珍しく?スポンサーとしての参加だったので、ブースを設置していきました。特に誰かから指示をされたわけではないのですが、自然とみなさんがブースを陣取っていて、練度の高さを感じました。

オープニング

今年もワクワクするオープニングから始まりました。
真面目な説明の中にいらすとや+みほらぶさんの組み合わせがあり、そこもしっかり解説されていたのが個人的なハイライトでした。

Agile開発奮闘記 〜「名前忘れ防止アプリ」誕生までの軌跡 〜

7人でWho?Name!を開発した話をまずは聞きました。
初対面で名前が覚えられないという悩みに対応するために開発されたプログラムであり、研究室に入った時にアイスブレイク的な形で取り組むためのゲーム(ナンジャモンジャのイメージ)だそうです。
開発にあたってはまずきょんさんやみほらぶさんや侍れっどさんや長沢さんから講義を受けた後、チーム内で情報共有をする仕組みやレビュー準備に時間をかけて質の高いフィードバックをもらえるように工夫をされていたということです。

AgileiOS開発・AI学習において未経験の私たちがiOSアプリを配布できた理由~

続いて、外国人向けの標識認識補助アプリを作った話を聞いていきました。
開発にあたっては、チームの連携力をあげるためにリアクションを活用したりホワイトボードを積極的に利用するようにしたそうです。加えて、実地調査やご飯を一緒に食べることをするという取り組みもあったそうです。
プロセスとしては、エレベーターピッチやバックログの優先順位付け、デモ回によるフィードバック反映などをしたそうです。
また、フィードバックは学生からだとパフォーマンス的観点などが多く、対処している課題である安全性の観点でフィードバックがもらえなかったので、警察署に行って安全性の観点でフィードバックをもらったそうです。
ただし実際に使ってもらった上でのフィードバックがもらえないため、TestFlightを活用したそうです。
結果的に機能が少なすぎるとAppleからリジェクトを受けてしまったそうですが、そこでNext stepのフィードバックももらえたため、チュートリアルを入れることで無事にリリースできて、使ってもらったユーザーからフィードバックを得られる動線が得られたということでした。

出会って五秒でプログラム~グループ活動マッチングサービス~

勉強に対するモチベーションや熱量、スタイルの違いを診断して相性がいい人たちをつなげるサービス開発の話を聞きました。
ただし2週間前にはやらないといけないことが多すぎてとても終わらせられない状態に陥ったため、一度タスクを再定義して必要最低限の仕事に棚卸ししたそうです。
また、開発にあたっては生成AIを活用したりすることで速度の効率化を図ったということでした。
最後に、実際にプロダクトのQRコードが配布され、どういうプロダクトなのかという説明や、一連の操作のデモが紹介されていました。

「デイリースクラムは20:00から」スーパーフレックスな学生チームでもスクラムを成立させた手法

函館の西部地区のさらに西側を活性するためのプロダクトの話がありました。
アプリ開発経験もチーム開発経験も共に薄かったため、認識齟齬をなるべく無くすための工夫をしていたそうで、その中でスクラムはぴったりだったそうです。
ただし学生だと授業時間外に集まるのが難しく、まずデイリースクラムを開催することが厳しいそうで、チームの中で会話して20時からデイリースクラムをしてその後有志が深夜にかけて開発するという方法を選択したそうです。(ただしデイリースクラムへの出席は自由とした)
結果的に、毎日誰かしらがデイリースクラムには出ている状態になっていたそうで、
・デイリースクラムは毎日やったほうがいい
・稼働時間が短くてもスプリントは延ばさないほうがいい
・疑問は早期解消
という点が重要だと感じられたそうです。

デモ展示

デモも見たかったのですが、今回自分の隠されたミッションとして、「スクラムフェス金沢で取り組もうとしている情報保障をどう実現したらいいのかを聞いてくる」というものがあったので、Chiemi先生にまずは話を聞きました。
Chiemi先生に聞くと、運営観点だとふじえもんさんやもりやさんに話を聞いたほうが良いというアドバイスをいただき、まずはもりやさんに話を聞きました。
そこで、RSGTではカプセルアシストさんに文字起こしに関してはお願いをしているという話や、手話通訳は現地の通訳者の方々に相談しているという話を聞きました。
そのうえで、費用的な観点からすべてを取り込むのは難しいことと聴覚障害と一口にいっても多様なバリエーションがあるため、実際に参加される方々に話を聞きながらどのような情報保障がいいのか相談してみるとよいのではないか?という結論になりました。
それを踏まえて、ふじえもんさんこうすけさんはやとさんに話を聞きました。
今回御三方はどちらかというと修正ありの文字起こしのほうがニーズが高い(=セッションを聞くのを楽しみにしている)ということで、具体的にどのセッションを楽しみにしているのか?という話などを伺いました。
もちろんそのセッションを必ず通しますという約束はできないのですが、何が気になるのか?という話は聞くことができたのは、どのセッションを対象にすればよいのか?というのが分かって非常にありがたかったです。

ランチ

Piroさんと古田さんとランチを食べました。
C++の話で盛り上がったり、アジャイル開発の考え方やスクラムの考え方はどういうところで実践できるのか?という話をしたりしていました。

その後は川口さんが来てくださり、古典的な膝ガックンをされた後、スクラム祭りとXP祭りの同時開催に関して川口さんが考えていることや、論理的にメリットデメリットみたいなのを整理する方向性があんまりいいとは思えない理由の話を聞いたりしていきました。

スポンサーセッション

ランチを食べて一発目はきょんさんのスポンサーセッションを聞きました。

まず、日本が抱えている大きな課題として高齢化・地方衰退・産業構造の変化や硬直化があるという話がありました。
その上で、今後の教育のあり方として、今は最下位層を中間層に持っていくか?という話がされがちだけれども、労働者が確保できないと三角形の面積が小さくなるため、AIを活用するなどといった25年ごとに起きている技術的革新のパラダイムシフトを活かしてトップレベル層の育成にシフトしていくんじゃないかという話がありました。
こういった話を踏まえてきょんさんは今ビジネスモデルの変革と人材育成に取り組んでいるということで、WhyとWhatの2スキルを軸としたチーム編成をして、2-3人で開発するスタイルを実践しようとしている(実践できるようにしようとしている)ということです。

課外活動PBLで「学びと成果を両立させるには?」を考える

未来大でFOIP、ETロボコン、PBLを経験されてきた名嘉さんから発表がありました。
名嘉さんはFOIPで「ガチ」路線の活動をやっていったり、ナレッジトランスファーを目的として一年生をたくさん集めたりと名嘉さんが主体となって色々な種類の活動をしていたそうですが、人数が集まらなかったりなかなか知識が伝達できなかったりしていたということでした。
一方で、PBLを経験してみるとアジャイル開発を用いて一定の成功がおさめられた成功体験を獲得したということで、これの違いはなんなのか?というのを考えだしたそうです。
名嘉さんが考えついた一つの仮説としては、自分が仕事を受け持ち過ぎているが故に自分対自分じゃない人、みたいになるのではないか?だったそうで、そうした仮説をもとに課外活動とそうではない活動ではリーダーシップを変える必要があるのではないかと思ったということです。
課外活動の場合は特に、課題に対しての向き合い方が異なるため、リーダーシップをトップダウンにしたりサーヴァント的なものにしたりすることで、どういう風にやるか?というのを固定してみるとやりやすくなるという感想を抱いたそうでした。

アジャイル開発で挑戦した! 〜LINE通知を活用した深層学習ベースのゴキブリ検出システム〜

ゴキブリは不意に立ち向かうことになるが故に怖くなるという仮説のもと、事前にゴキブリを探知するシステムを作ったという話がありました。ゴキブリの検知に際しては、YOLO11を使用してアノテーション済画像で2000枚程度の学習を行っているそうです。
開発に際しては、ゴキブリの検知を何よりも重視したそうで、通知に関してはLINE notifyで簡易的に行ったということでした。
中間発表では、肯定的な意見と共にゴキブリの画像を生で送るのはやめてほしいという意見があったそうで、そこでいらすとやに変換する考え方や3Dプリンターを使った箱の開発を思いついたそうです。
その後もいわてメイカー展などでフィードバックをもらったそうで、赤外線よりも超音波のほうが適していることがわかったり、撃退するためのスプレー設置などを行ったということでした。

ハイブリッド環境でのモブプロ挑戦記 〜対面×オンラインの壁をどう乗り越えたか〜

ナビを使っても変な道にあたってしまうというつくばの問題を解決するためにプロダクトを作った事例の発表がありました。
聴覚障害を抱えているというコンテキストもあり、コミュニケーションの困難さや状況把握の困難さをモブプロをし始めた当初は強く感じたそうで、対話ではなくチャットを活用してスムーズに情報伝達をするようにしたということです。同時に、Miroを活用することで文字だけでは難しい情報のやり取りを行ったそうです。
また、ふりかえってみると、ドライバーをオンライン参加者の人がやるようにして、ナビゲーターを現地参加者がやるようにすると、情報共有がよりスムーズになるかな?と思ったということでした。

PBL学習において、中途半端なアジャイル開発に陥った理由を徹底的に分析してみた

アジャイル開発を一度経験してみた上でなぜ「アジャイルっぽい」状態に陥ったのかを考えてみたという発表でした。
実際にプロダクト開発をアジャイルでしてみたところ、こちらのチームではユーザーのニーズに合わせるといったところはうまくいったものの指示待ちっぽくなったりステータスがあまり可視化されなかったりといった問題も感じたそうです。
そこで、Mad-Sad-Glad、Start-Stop-Continueの手法を使ってふりかえりをしたそうで、そこでメンバー間での発言量の偏りがあるが故に全体的な開発の遅れがあったことや、やらされている感がある人たちが多くいたことが分かったそうです。
そこで、チームで進捗管理の頻度を最初に決めて進捗報告をすることにしたり、アジャイル開発の理解を徹底的に行うことが大切だと感じたということでした。

デモ展示

続いてのデモ展示の時間では、今回話を聞きたかった海外コミュニティの歴史の話や以前moriyuyaさんがKiroさんから教えてもらったと話していたプラクティショナー/メソドロジスト/エバンジェリストの3分類の話を聞いていました。
残念ながら後者に関してはその話がされたコンテキストというものをまったく覚えていないということでしたが、コミュニティの全体性に関する話を色々と聞いたり、このAgile PBL祭りという場が良い場になっている理由などを聞きました。(文章にはしにくい生々しい話が多かったので大幅に割愛)

また、たいとさんと久しぶり(RSGT2024ぶり)に再開して、お互いの仕事の話を色々としたりしました(さすがに書けないので大幅に割愛)

頑張らない人生

元々、24時間開発すれば間に合うマインドで火災現場を何とかしていたのっちまんさんから話がありました。
のっちまんさんは、あなたがいなくなったら困ると思う状態自体が頑張り過ぎている信号だと考えているそうで、そういう状態になったらWhenによる制約を課すようにしているということでした。(こういう状態になるまで自分は手を出さない、というのを決める)
具体的には、あなたしかできないかつあなたしかやる人がいないというLevel1のタスクは一つ以上持たないようにする、あなたしかできないがやれる人は他にもいるLevel2のタスクも1つしか持たない&他の人もできるようにするタスクを積む…をしているということでした。
こう思うようになったのは、Level1のタスクをあまりにも抱え過ぎて身体にガタが来たという経験や、自分がいなくなっても普通にプロダクト開発が継続されていることを目の当たりにしたことが大きかったという話がありました。

アジャイル開発って何?」から始まるPBL、気づけば周りから「ブラックプロジェクト」と呼ばれていた件

スクラム経験はおろか開発経験があるメンバーが6人中1人というプロジェクトを実践したチームの話がありました。
こういったコンテキストも踏まえて、Notionによるタスク管理やランダムで司会を割り当てることで誰もがスクラムを進行できるようにするという工夫をされていたそうです。
また、スクラムイベントはデイリーを22時15分からスタートしてレトロスペクティブやプランニングは金曜日に対面で行うようにしていたということです。
作業の大半を授業外にこなしていて、22時15分からデイリースクラムをやっていたり週7日体制でやっていたことには周囲からブラックプロジェクトと呼ばれたりしていたそうですが、それでも初心者ばかりなのに無事にプロダクトを作ることができてすごくうまくいったとは感じているというお話でした。

経験依存から脱却しよう!~経験の少ないメンターが教える側として向き合うために~

ギルドさんから、メンターを経験してみて大切だと感じた内容に関して発表がありました。
まず、経験を一方的に押し付けるのはアンチパターンであるという話がありました。そうならないように、誰が何が得意でどんな技術を使っていて、どんな悩みを持っているのかを聞くようにすることがまず大切だということで、共通点を話しながらまず話を聞いてみるようにしていたそうです。
一方で、実はチームでその方針の合意が取れていないようなときはメンターが口出ししたほうがいいと思っているそうで、そういう時に口出しがスムーズにできるようにするためにもメンターはまず観察することを大切にしてほしいということでした。
具体的には、チームが八方塞がりだと感じた時やアドバイスを求められている時、本質的な問題とは離れたところで苦労している時などが該当するということです。

アジャイルな組織は情熱が命!後輩の情熱を引き出すために

昨年度はメンバーが仲良く常にお互いの状況を把握していてプロダクト開発が楽しく、自発的に開発を皆するが故に徹夜も当たり前という状態で、情熱が大切だと感じたという話から始まりました。
しかし今年は、活動時間が減りつつ引き継ぎをする必要が出てきて、情熱をどのように伝承するかを試行錯誤したそうです。
やってみた取り組みとしては、1on1であったり、合宿形式で知識を伝達するといったことやハッカソンへのチーム参加が挙げられるそうで、新メンバー目線でもプロダクトに対する期待の大きさやプロダクトに対する情熱や開発の楽しさが確実に伝わったということでした。

デモ展示

最後のデモ展示の時間は、さとりゅうさんと久しぶりに会ってお話をしていたり、無理やり名前をブログに載せようと絡んでくださったおがさわらさんと話をしたりしていました。
最初はむらかみさんも交えて他愛もない話をしようとしていたのですが、途中から川口さんやAkiさん、おーのAさんなどがパックマンに入ってきて、最近Scrum Tokyoチャンネルがアツいという話を聞きました。(毎日公開+サムネ設定の効果が出ているのか、動画再生数が伸びてきている)
動画の公開ペースが早いため自分もなかなか動画に追いつけていないという話をしていたりレッツゴーデベロッパーの動画が全然見られていないという話をしていたところ、河北新報のEbinaさんの話だけはぜひ見てほしいという話を川口さんから教えてもらったりしました。
その後は、スクラムフェス盛岡をいつやるのか?という話を天野さんが淡々と真正面からしのぴーさんにしているという話を聞いたり、川口さんは人に何かを押し付けたりはしないんだけれども自分が好きなものや面白いと思ったものに関しては天野さんと異なる方法で勧めてくるという話を聞いたりしていきました。

全体を通した感想

上記には書ききれませんでしたが、ブースで学生さんたちからアジャイル開発をやったりスクラムを経験して悩んでいることの話を聞いたりすることができたり、プロダクトに対する愛が溢れている話や純粋に開発を楽しんでいる話がたくさん聞けて、ものすごく楽しかったです。

論理が通っているからと思い込んで仕事でやっていることに気がつけたり、未経験からプロダクト開発をしてみたらそれが楽しくて仕方がなかったという話をたくさん教えてもらうことができたのは特に良かったです。

明日からは今の仕事が楽しいと思えた原点やアジャイル開発に出逢ったときのこのを思い出しながら、ここ最近手癖のようになってしまっている部分を見つめ直してまた仕事に戻りたいと思います。お話してくださった皆さんどうもありがとうございました!