今日から参加しているスクラムフェスニセコで、みほらぶさんのkeynoteを聞いてきたので、その記録を書いてきます。
今回のkeynoteはコミットメントに関するお話でした。
- スライド
- 初心者向けスクラムクイズ
- The Agile Quadrants
- スプリントレビューから逆算してユーザー体験を考える
- 東南アジアのアジャイルコミュニティ(閑話休題)
- Commitment(約束と確約)
- Commitment VS Harrisonism
- アレグザンダーとcommitment
- 「コミットする」の尊さ
- Q&A
スライド
初心者向けスクラムクイズ
こちらのQ18に関してスクラムの価値基準の話があり、ここでは「スコープの達成を約束」という確約の説明が間違っているという話がありました。
スクラムはただの繰り返しプロセスを導入している訳ではないのですが、(特にアジャイル開発をやっていない人は)繰り返すことにすごく注目をしがちで、繰り返していさえすればアジャイル(スクラム)だと誤解されやすい印象があるということです。
The Agile Quadrants
繰り返していさえすればアジャイルだという誤解に対する整理にもなる記事として、以下の記事が紹介されました。
Agileかどうかの2分はそもそも間違っているという話で、Soft Agileと呼ばれるような場合がある(Serialなケース)という整理がされているそうです。
この記事からもわかるように、インクリメンタルしたいのはデリバリーではなく、ユーザー体験だということで、スプリントレビューはまさにユーザー体験のデモであるということでした。(映画はリリース(デリバリー)自体は一回だけどもユーザー体験がインクリメンタルになっているという点ではインクリメンタルなものだと言える)
スプリントレビューから逆算してユーザー体験を考える
ユーザー体験をインクリメンタルにするために、プロダクトの価値が最大になるように検査して適応したスプリントレビューやスプリントゴールを見据え、そこからデイリースクラムなどのスクラムイベントを設計するという話がありました。
東南アジアのアジャイルコミュニティ(閑話休題)
アジャイルコミュニティは日本でも海外でも内発的動機づけがベースになっており、ボランティアによる運営が基本で気質や文化も異なる人達が集まっていることが多いということですが、東南アジアコミュニティでは運営に関する様々な課題があった*1ということでした。
そこで、課題を解消するために再起を喫することを決めた運営は、代表の人が経営している会社でスポンサーをし、運営スタッフもその人の会社から大量に出すことにしたということです。
しかしその結果、その会社がスポンサーにも登場するしセッションにも登場するし...という風に会社がかなり目立つようなカンファレンスになってしまい、「もっとコミュニティドリブンにすべきだ」「君たちはcommitmentしていないんだから意見を出すべきではない」といった議論が起きてしまったということでした。
Commitment(約束と確約)
「確約」はcommitmentと言い換えても同じ状況もありますが、commitmentという概念は非常に複雑なものであり、「約束」とも異なるものだという話がありました。
上述した東南アジアのコミュニティでも自分以外の人が「commitment」しているかどうかが話題になっているように、ついつい他人に対してcommitmentを求める場面もありますが、そもそもcommitmentは内発的動機が必須要素であり、自分が起こす行動以外*2に対してcommitmentさせることは不可能だということです。
みほらぶさんは、こうしてcommitmentを他人に求めてしまうのは、自分がエンゲージメントを高められていない*3からでは?という仮説を持っているというお話でした。
スクラムガイドの原文でも、「The Scrum Team is committed to〜」ではなく、「commits」になっているということで、「誓約させられる」のではなく「確約する」ものだということです。
なお、生成AIにあえて確約以外の訳を意訳でつけてもらうと、「主体的に取り組む」「決意する」といった言葉が挙がってきたということでした。
Commitment VS Harrisonism
上記の話から、「もっとコミットしろ」と言われた場合は、「ハリソン山中かよ」「それって仕事じゃなくて犯罪でしょ」(地面師たちが元ネタ)と言ってあげる必要があるということです。
みほらぶさんはこのことをHarrisonismと呼ぶことにしたので、これだけは覚えて帰ってほしいということでした。
アレグザンダーとcommitment
アレグザンダーが、「何かを決定するときや何かの行動をするときなどに、いつであっても自分の内部からにじみ出ている美しさに裏付けされている」という発言をしたように、commitmentをするときには自分が本当にやりたいことなのか?と問いかけてみるのがよいということでした。
「コミットする」の尊さ
スクラムフェスニセコではOSTがメインコンテンツとしてありますが、移動性の法則にもあるように、OSTでは自分がコミットする(貢献する)良い練習の場だという話がありました。
そのため、スクラムフェスニセコのような場では、貢献できると思ったらその場ですぐに貢献して、貢献できないと思ったらその場を離れることをしてほしいということでした。
また、貢献できないと思ってその場を離れた人に対してなんの悪意や嫌な気持ちを感じないようになると、すごく気が楽に仕事ができるようになるはずだということで、前回みほらぶさんがkeynoteをした際にいった「カンファレンスを実験の場にする」ということにまさに通じると思っているそうです。
Q&A
講演の後はQ&Aがありました。以下、質問と回答を常体かつ一問一答形式で記載していきます。
commitmentに対して報酬という形でどう報いればよいのか?
結びつけないようにしてほしい。
補足するなら、ボーナスでは頑張りを評価するのではなく、あくまでも成果だけを評価したほうがよい。
ちなみに、みほらぶさん個人としては、これだけ渡しておけば給料に文句は言われないだろうという金額の給料を渡しておくのが好き。
東南アジアコミュニティでは全員commitmentしていたと思うが、なにが足りなかったのだろうか?
毎年この時期にこういう場を作る、みたいなのができていなかったからではないかというのは仮説として持っている。(東南アジアでは結社にも許可が必要だったりする)
commitさせる事はできなくても促すことは可能か?
これはHarrisonismなので不可能。
東南アジアコミュニティでは全員commitmentした結果衝突が起きているように見えるが、commitmentの結果どうやって解消に向かえるのか?
ぶつかることは悪くないと思う。RSGTの運営は結構ぶつかっている。
「合意しないことに合意する」をして次に進むことはよくやっていて、合議したりお気持ちを話し合い続けるくらいの時間があるならやるべき仕事を探したほうがよいと思っている。
ライザップはcommitさせているのか?
ライザップいったことがないからわからない。
*1:赤字になってしまい個人がお金を肩代わりしたり、スタッフや参加者が毎年ガラッと変わってしまう
*2:他人の行動や仕事の結果、起きる事象...
*3:ギャラップの12の質問(Q12)でどれくらいYesがつくかを考えるとよい