本記事では、タイトルの通りプロポーザルの採択を意識した時に起きる罠を書いていきます。
なお、自分が主に参加しているオープンプロポーザル形式のカンファレンスは地方スクラムフェスやRSGTなどアジャイルやスクラム関連の物が多いので、なんとなくそうではあるんだろうなあと思いつつ(実際に話を聞いたりして仮説を確かめている訳でもないため)それ以外でも通用する話なのかはよくわかっていません。
プロポーザルの採択を意識しすぎた結果起きる可能性がある罠
自分が想定していた話(話せる話)とプロポーザルの内容にGapが起きる
自分は個人的な趣味で、スクラムフェスに提出されているすべてのプロポーザルに関してすべての項目を読むようにしていると同時に、セッション動画もすべて見るようにしているのですが、ここ一年でプロポーザルとセッションの内容のGapが目立つことが増えてきました。
これは実際にセッションを作って誰かにFBをもらって参加者のことを考えて改善したりした結果である可能性も高いですし、プロポーザル段階で書いたことを完璧に再現しろというのはかなり厳しい話なので、それ自体は決して一概に悪とは言えないのですが、プロポーザルの内容が話されることを期待して採択したカンファレンス運営の期待とのGapが生まれてしまったり、この話が聞きたいと思ってlikeした(あるいはセッションや動画を見に来てくれた)方とのGapが生まれるといった側面があります。
そして、そうしたプロポーザルとセッションの内容のGapが目立つセッションのプロポーザルを見てみると、フィードバックコメントの内容を反映した履歴が多いことに気が付きました。
フィードバックコメントの内容を反映することはどう考えても良いことだと自分は思っていたので、正直これに気がついた時は混乱したのですが、コメントの内容を見たり*1発表した本人にちょっと話を聴いてみたりすると、フィードバックコメントの内容の中でも「〜といった観点で話がされるともっと良くなると思う」「〜の話も聞きたい」というコメントが特にその傾向が顕著だということが分かりました。
これはおそらく、発表者本人があんまり話せると思っていないけれど皆が聞きたいなら、という善意でフィードバックを反映した内容にした結果、いざ準備してみると話せなかったり、自分が元々イメージしていた話と違う観点になってしまい話がまとまらないことが原因だろうと個人的には推測しています。
実際発表準備の感想を聴いてみると、発表に向けた準備をする段階でやっぱり話すことがきないことに気がついて内容を話もあるので、10-15程度のサンプルではありますが、概ねそういった側面もあるのかなーと捉えています。
プロポーザルの採択に近づこうとすると、そういった自分には話せない(あるいはそこまで話したくない)ような内容であっても、プロポーザル段階で取り入れようとしてしまいがちな傾向にあるので、注意したほうがいいと個人的には思っています。
また、これとは全く別の観点ですが、プロポーザル採択に近づこうとすると、運営や参加者の方に目を引いてもらえるように誇大なタイトル(汎化し過ぎ、発表で主に伝えられることの主題からずれている...)をつけたくなるフォースも働くので、その点も注意したほうが良いと個人的には思っています。
発表準備が大変になる
話としては、上記の「自分が想定していた話(話せる話)とプロポーザルの内容にGapが起きる」とまったく同じなのですが、上記ではどちらかというと運営や参加者に対して起きてしまう罠を話したのに対して、こちらは発表者本人に起きがちな罠です。
上記のようなことが起きると、発表者も発表準備の過程で思うように話がまとまらなかったり、言い過ぎだと分かっていながら発表することになったりしてしまい、準備のときにプロポーザルで書いた要旨とずれてしまうことに苦しんでしまうことがあります。
採択されなかったときのダメージがでかい
プロポーザルを出すことにハードルを感じているという方に話を聴くと、まだ一度もプロポーザル出したことがない方も一定数いる一方で、それ以上に高いハードルを持っているのは、プロポーザルを出したことがあるけれどAcceptされなかった方であることが多いです。(これに関しては200以上のサンプルがあり、スクラム系カンファレンスであればまあまあ確からしいと個人的には思っています)
同時に、Acceptされないことをプロポーザルを出さない理由にされることも多いです。
採択されるかどうかではなくプロポーザルをまとめる過程で得られるメリットなどにも焦点が当てられていれば、自分のためになるという意味でもまたプロポーザルを書いてみようという気にもなるのですが、そうでないとどうしてもプロポーザルを出しにくくなってしまうので、採択に拘りすぎると次にプロポーザルが出しにくくなる副作用がある点には注意が必要だと思っています。
自分の経験や学びが変にまとまってしまう
採択されやすい内容を目指した結果、カンファレンスの趣旨に合わせるような形で話を強引にまとめてしまったり、カンファレンスの趣旨とはそぐわないけれど貴重だった経験などが削ぎ落とされてしまうリスクがあります。
これは、発表者本人としても学習機会の損失になってしまいますが、発表を聞いた人にとっても、重要な前提情報が抜け持ちていたり、誤った概念で話を理解してしまうリスクがあるので、注意が必要です。
おまけ〜プロポーザルの採択を意識しないコツ〜
あんまりおすすめはできないですが、プロポーザルを毎日1個くらいのペースで書いていると、採択されるかどうかというよりもプロポーザルを書くことでのメリットをより実感できるようになり、採択されるかどうかはおまけだなあというのを感じられるようになるので、どうしても採択されることが気になってしまう人は試してみるといいかもしれません。
*1:現在はConfengine上で確認することは運営の人以外は不可能になっている