こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
- 会の概要
- 会の様子
- 西尾さんの講演〜LLMを使いこなすエンジニアの知的生産術〜
- Q&A
- アウトプットの見た目部分に関して意識していることはあるか?
- 先輩から後輩へさりげないアウトプットのコツはあるか?
- LLMを使いこなす知的生産術の執筆予定はあるか?
- 仕事している最中に得た知識をアウトプットできる状態にするためにしていることや意識していることはあるか?
- 教育現場だとLLMを活用できる人/できない人の2極化が進んでいるように思えるが、どうするとLLMをとうまく使えるか?
- 個人で使うLLMサービスは複数利用しているか?どう使い分けているか?
- Scrapboxにまとめた情報は見直す機会がないと、リンク機能が活かせなかったり知識の幅やつながりが広がらないのだが、定期的に見直す機会は設けているのか?
- 10年後、急速に進化したLLMとの知的生産術はどうなっていると思うか?
- 会全体を通した感想
会の概要
以下、イベントページから引用です。
仕事をするうえで、どのように学び、整理し、アウトプットするのか。 サンプルコードの丸写しでは仕事に役立つプログラムを書けないのと同様に、知的生産術も丸写しでは役に立つものにはなりません。本書では、数々の知的生産術を比較して学ぶことで、何が重要な原則なのかを体得し、みなさんが自分の環境に合わせて手法を修正し、組み合わせ、新しく生み出せるようになることを目的としています。
またAIの普及によって、私たちの学び方も問われるようになってきました。その風潮もあり、こちらの本が5刷を迎えています。 改めて、学びについて考えていきましょう。 今回は著者の西尾 泰和氏に本書のポイントについてお話していただきます。
会の様子
西尾さんの講演〜LLMを使いこなすエンジニアの知的生産術〜
書籍を出版してからの5年間と今後の5年間
書籍を出版してから5年、着実に本書籍は売れ続けており、「10年使える知識」を半分実証できたと考えているそうですが、今後の5年間でLLMの発展があることを考えると果たして本当に使える内容なのか?というところには西尾さん自身も疑問に思ったということで、LLMに聞いたということです。
LLMの回答と今後の時代における本書の価値
LLMは、本書を読んで、今後の時代においてますます重要な内容だと考えているという出力をしたそうです。以下、その根拠を箇条書きで記載していきます。
- 情報収集してそれを抽象化/モデル化し、実践するというサイクルは今後LLMを使いこなしていく上でより重要になってくるスキルである
- 「やる気」や熱意は稀少なリソースである
- 記憶する技術は情報の構造化にもつながるため、単なる記憶にとどまらない話が書かれている本書は役に立つ
- 情報は今後より氾濫するため、情報を効率的にキャッチアップしたり学ぶべき対象を見極める必要がある
- LLMによって生成された情報を批判的に吟味してオリジナルな考え方を生み出す能力が必要になる
- アイデアを価値があるものにするためには、人間の力が今後必ず必要になる
西尾さんの知的生産術の変化
続いて、本書を執筆した後に西尾さんに起きた知的生産術の変化の話がありました。
最初の変化として、ブログをScrapboxに移行した話が挙げられました。
西尾さんは、社会的トリガーの活用や多くのメリット*1が発生するため、ブログを書くようにしていたということです。しかし、Scrapboxが登場して、使い込み出したということでした。Scrapboxは、
- 情報間の関連性が低コストに表現できること
- 存在しないページへのリンクを作ることで知識の拡張性
- リンク作成時に検索して関連しそうなページを提示してくれるので、知識との関連性を見つけやすい
- 低コストで連想をストックできる
- リンクによって忘れたことが思い出させてくれるので、今考えていることに関連した過去の経験や知識を思い出させてくれる
という特長がある点がすごくよかったということです。
次の変化として、紙のKJ法からKozanebaで電子的KJ法をするようになったということが挙げられました。これは、
- 永続的に情報が保存できること
- コピペが簡単にできること
- 情報間の関連が線を引くことでできること
- ズームできること
が理由だということです。
最後の変化として、LLMの活用が挙げられました。
西尾さんは、自身の知識ベースとChatGPTをつなげた*2そうで、自分の過去の知識をLLMに活用できるような状態にしたそうです。
結果、検索能力の飛躍的な工場とと考えをまとめるための時間の飛躍的な短縮(たたき台をもとにして考えを整理するほうが圧倒的に速い)があったそうです。
また、論文の読み込みでLLMを活用しているそうで、書籍に書いてある速読による概観把握が飛躍的に向上したということでした。
書籍の要約に関しては、@blu3moさんが行っている詳細度別に要約を提示するサービスが面白いそうで、まずざっくり要約して詳細部分を徐々に増やしていくような要約をすることで、ブロードキャスティングからブロードリスニングする世界線が見えてきているということです。(Plurality Assistantも参照)
こうした要約技術の発展は書籍の読み方にも影響を与えているということで、非線形的に読書するスタイルが非常に取りやすくなり、今後は知識伝達手段としての本の形式に変化があるだろうと想像しているそうです。
他にも、LLMの完璧な記憶力を活用して、書籍の執筆などもできるんじゃないかと考えているそうですが、大きすぎるコンテンツを入れたときに結果的にコンテキストを食い尽くして記憶喪失になってしまう点や記憶を忘れることができない点は今後の課題になってくるだろうと考えているということです。
Q&A
講演の後はQ&Aがありました。以下、質問と回答を一問一答形式かつ常体で記載していきます。
アウトプットの見た目部分に関して意識していることはあるか?
最近は後からの活用を考えると、PowerPointやkeynoteよりもScrapboxの方が良いと思いだしている。見た目を綺麗にしてしまったりビジュアライゼーションしてしまうと、自分の知識ネットワークという観点では損になる。
先輩から後輩へさりげないアウトプットのコツはあるか?
質問の意味がよくわからないので答えられない。プロンプトを書く技術を磨くと良いと思う。
LLMを使いこなす知的生産術の執筆予定はあるか?
執筆の定義による。紙の本は書く予定がないが(そもそも紙の書籍が知識の伝達として有効ではないと思い出している)、どういう風に知的生産術に活かしていくかを文章にしてアウトプットするという意味だと、すでにやっている。
仕事している最中に得た知識をアウトプットできる状態にするためにしていることや意識していることはあるか?
世の中には出さないアウトプットもあることを知っておけるとよいと思う。最初から公開しようとしないようにすることも大切。
教育現場だとLLMを活用できる人/できない人の2極化が進んでいるように思えるが、どうするとLLMをとうまく使えるか?
「教育現場でLLMを活用」が漠然としているので、例えば「歴史の史実を深めるために活用する」といったように、うまくできている人のやり方をより具体的にしてあげるのが良いと思う。
個人で使うLLMサービスは複数利用しているか?どう使い分けているか?
論文要約などはコンテキスト幅が長いのでClaudeを使っている。一方で明確なタスクがある場合はカスタマイズ性が高いChatGPTを使っている。
Scrapboxにまとめた情報は見直す機会がないと、リンク機能が活かせなかったり知識の幅やつながりが広がらないのだが、定期的に見直す機会は設けているのか?
充分なリンクがあると、新しく何かを書くたびに知識を見直す機会が創出される。定期的に何かを見直すみたいなのは退屈なのでやっていない。あくまでも好奇心ドリブンでやっている。
10年後、急速に進化したLLMとの知的生産術はどうなっていると思うか?
わからない。人間が知的生産術をしなくてよくなっているかもしれない。
ただし、現代でもGoogle検索をほとんど使わない人がいるように、LLMを全く使っていない人もいるだろうと思う。世界の分断は起きると思うし、公益を分断した世界で交換する人も出てくると思う。
重要なのは観察することで、AIのほうができる領域とそうではない領域を見極める必要がある。
会全体を通した感想
エンジニアの知的生産術は前職時代に話題になっていた本で、新人教育などにもすごく使える本だと思っているので、そこにLLMという観点でどういうアップデートが入ったのかを知れたのは非常によかったです。
また、Scrapboxをここまで使いこなしている人は見たことがなく、西尾さんの知的好奇心の高さとモデル構築の巧みさを実感できる会でした。