こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
目標設定の基本 by ryuzeeさん
disclaimer
基本というタイトルにしているものの、時間の関係で目標設定にまつわるあれこれを網羅することは不可能なので、「〜の話が基本なのにないじゃないか」というマサカリは辞めていただきたいということです。
目標設定でよく言われる話
導入として、目標設定で「定量化」を求められることが多いけど、目標を定量化するというのは怪しさもあり、本質からは若干ずれているんじゃないか?という話がありました。
目的と目標
辞書定義を基に考えると、目的は最終的に達成したいことであるのに対し、目標は目的を達成するための手段であると捉えられるという話がありました。
企業の目的
ドラッカーの話から、企業の目的とは顧客を創造することであり、企業が何かを決めるのは顧客だという話が引用されました。
そこから、顧客との価値交換システムを中心に据えて目標設定をしていくことが重要なのではないか?というお話がありました。
組織目標の中には、どうしても顧客の価値交換システムとは直接関わりがないものもありえますが、それが目標の大部分を占めているのはおかしいだろうということでした。
SMART
目標設定をする上ではSMARTが取り上げられることが多いのですが、Mがどうしてもフォーカスされがちで、Rがより重要なのではないか?という話がありました。
測定可能であるものの関連性がないものはビルドトラップに陥る危険性やグッドハートの法則が発動してしまう可能性があり*1、価値のないものが大量に生産されるリスクがあるそうです。
目標の数
基本的に時間は足りないものなので、目標の数は自分の口ですぐに思い出せるくらいの数が適切だというお話がありました。
目標の検査と適応
半年前の目標が有効な場面は必ずしも多くないため、上司と話をしたりする中で、適宜目標をアップデートしていく必要があるだろうという話がありました。
企業のシステム的にアップデートできるタイミングは半期に一度しかないなどはあるあるですが、そういったときはGoogle Docを実質的な目標シートにするなどといった工夫をすることが重要だということです。(組織のルール上だめだと言っている人もいるが、意外と運用でカバーできる可能性もある)
パネルディスカッション by仲さん牧志さんryuzeeさん
仲さんとryuzeeさんのディスカッション
以下のようなポイントが提示された上で、「報酬と目標設定が結びついてしまっている状況の場合、アウトカムを出しつつ本人の頑張りを評価できるような目標設定をするにはどうしたらいいのか?」という議論が進んでいきました。
- エンジニア目線で先行指標を定義すると、XX個リリースみたいになりがち
- 売上指標に対してエンジニア個人が直接的に関わりにくいので、売上で評価が変わることに納得感をもたれづらい
- 古い機能の維持をしている人は新しい機能をリリースしている人よりも評価がされづらい
まず、目標設定の達成度を見るとその人の評価ができるのか?というところにそもそもの疑問を持っているという話がryuzeeさんからありました。
スプレッドシートで数値をぽちぽちしたら評価が定量的に出るなんてことは本当にあるのか?ということで、理想的にはマネージャーがメンバーの仕事ぶりを長い時間よく観察した上で評価が決まることが重要なのではないか?というお話でした。
そのため、目標設定自体はしつつも、普段一緒に仕事をしている人の360度フィードバックなども使いながら評価を決めていくことが重要ではないか?ということです。
また、評価を受けたときに被評価者がびっくりしてしまう時点で負けだということで、それを防ぐために評価に関して話をする回数を確保しておくことが重要じゃないか?という話もありました。
牧志さんとryuzeeさんのディスカッション
続いて、成長をサポートする効果的な目標設定やふりかえりは?という話でディスカッションがありました。
ryuzeeさんは、「こういう風に目標設定をするといいよ」は正直わからないけれど、「この目標はいけていないな」というのは検査と適応を繰り返すと分かるため、適宜達成状況を評価者と被評価者の間で一緒に話しながら、目標設定の運用を重要視するとよいということでした。
また、別観点からのアドバイスとしては、発達の最近接領域の話が挙げられており、自分ができることよりもちょっと上のレベルの目標を設定することが重要なのではないか?というお話もありました。
Q&A
チームで価値を生み出すことがゴールなので個人の目標設定をするのが難しいのだが、どのようなコツがあるのか?
チームの誰かとコンフリクトするような目標や、目標を立てたことでチームの足を引っ張る可能性があるインセンティブが生まれる目標をたてるくらいなら、個人目標を立てなくてもいいのでは?と思うというお話でした。
結果的に顧客への価値と技術評価はどのように紐づくのか?チーム内同一評価をしない前提ならどう個別評価すればいいのか?
悩みつつではありますが、開発した機能が顧客にどう利用されるのか?を意識して評価の説明しているようにしているという話がありました。
また、最終的なユーザーの価値に関連した目標を立てるようにしつつ、チーム内での期待値やチーム内でどんな部分にスペシャリティを持っているのか?という話をするようにしているという話も出ていました。
他にも、組織によって「なんで目標設定するの?」が全然違ってくるので、なぜ(評価するために)目標設定が必要なのか?を話すことが重要ではないか?という意見も出ていまいた。
アウトカムと業務の関連が薄い、社内情シスやプロダクト維持みたいな場合はどう評価すればよいのか?
目標設定で評価は決まらないという話を前提にしつつ、情シスやプロダクト維持もアウトカムにはなるのでそこを評価したらいいのでは?という話がありました。
また、運用業務はかなり評価が難しいというのはそのとおりだと思うという意見も出ていました。
全体を通した感想
後半のディスカッションで、マネージャーの方を中心に、現場の生々しさがあふれるような質問が多く集められていたのが印象的で、参考になるお話も多く聞くことができて、非常に楽しかったです。
*1:報酬と結びつくとなおその可能性は高い