天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

(オンライン読書会) 能動的推論  ~心、脳、行動の自由エネルギー原理~に参加してきた

educational-psychology.connpass.com

こちらのイベントに参加してきたので、会で話して面白かったことと感想を書いていこうと思います。(少し遅れて参加したので、前半の方に話していた内容に関しては聞き漏れています)

ハミルトンの最小作用原理と能動的推論

能動的推論のアナロジーとしてハミルトンの最小原理の話が出ていました。
ここで、前回の読書会でも出てきた統計物理学の話があり、ミクロな視点で捉えると一連の現象として説明が難しくても確率分布を活用したりマクロな視点で捉えると説明できる現象があるという話が出てきて、これが能動的推論で変分法を活用するモチベーションになっているという話がありました。

行動の最適化

まず最初に最適化されるのは推論のやり方であって、その後に行動が最適化されるという風に、順番が最適化にはあるよね、という話をしていきました。
書籍内でもあったように、経済学や強化学習などで言われているような行動(価値関数)の最適化とは異なる観点で行動の最適化が語られているのが面白かったです。*1

信念の度合い

信念というと確固たるものを思い浮かべがちなのですが、信念はあくまでも確率分布であり、度合いがあるという話が出ていました。

信念は隠れ状態だからわからないけれど行為の状態はわかるため、目的論でいえば目的自体は隠れ状態になっているけれども、目的を観測することはできるよねということで、不確実性を取り込んだ考え方ができるようになっているのは面白かったです。

ベイトソン

前回の読書会に引き続き、ベイトソン味が溢れる話がいくつも出てきました。

  • ハミルトンの最小原理では、物理現象としては一定の状態に収束していくやつと発散するやつがあり、成功は結果として生き延びたものだという考え方はまさにベイトソンに近い
  • 階層的な生成モデルがベイトソンの論理階型の話と近い
  • 普段高山に暮らしていない人が高山に登ったら一時的に血圧などを整理して適応するが、高山に暮らし続けるなら遺伝的に極値を調整するというベイトソンの話が、能動的推論の「能動」と共通している

変分推論

第二章の「能動的推論の常道」で話されていたようなHOW的な話から駆け上がったとしても、今回読んだ「能動的推論の王道」の観点から駆け上がったとしても、汎関数の最適化や変分法の概念にたどり着くというのは面白いという話が出ていました。

さらっと流していた2章の変分近似の話と共通しているのは面白いですし、2章の話を思い出させてくれる読書会のありがたみを改めて感じました。

期待自由エネルギーの反駁

期待自由エネルギーは変分自由エネルギーの10年後に出てきたものだという話を教えてもらい、いくつか疑問を呈しているような記事があるというのを紹介してもらいました。

note.com

www.slideshare.net

全体を通した感想(本コミュニティで今年の読書会を終えた感想)

学びと心理学のコミュニティでは年内最後の読書会でしたが、今年は濃い本を2冊読むことができて非常に楽しかったです。(1冊しか読み終わっていないですが笑)

様々な分野に関する知識を持ち合わせている方々が集っている読書会なので、多く学びがありました。(今日の読書会でも、物理学の話やベンジャミン・リベットの話など自分一人ではどうやっても連想できないような話が色々とつながってきて、充実した時間を過ごすことができたと思います。)

*1:厳密には、経済学や強化学習でも価値観数の最適化を純粋にしない変分法を活用した最適化などもありますが...