天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

(オンライン読書会) 能動的推論  ~心、脳、行動の自由エネルギー原理~に参加してきた

educational-psychology.connpass.com

こちらの読書会に参加してきたので、会で話して印象的だった部分を書いていこうと思います。

デカルトっぽさ

今まで信じていたものを本当か?と疑ってみた結果、色々なことが間違っていたり決めつけていたりすることがわかって、結果的に第一原理からスタートしたところがデカルトっぽいという話が出ていました。

模倣と適応と適合

生物が外部環境を完全に模倣してしまうと、それはもはや生物ではなくなってしまう(死に至ってしまう)し逆同期を説明することができない、という話をしていきました。

また、外部環境を受けて好ましい方向に適応していくことはある種のプロセスと捉えられ、そうしたプロセスを積み重ねていった結果が適合になるという整理をしていきました。

ハミルトンの最小化原理と能動的推論

ハミルトンの最小化原理の説明と能動的推論との関連を、物理学専攻の方から色々と教えてもらいました。

ある程度マクロ的視点で考えてみるとある方向性を保った状態で一点に向かうという考え方が、能動的推論における自由エネルギーの最小化とつながっているという話で、この後にも出てくる「ポリシー」という単語と合致しているという話を聞いていきました。

同様に、本書で記載されていた統計物理学の側面で捉えた能動的推論の説明に関しても力学を例に補足していただき、非常に面白かったです。(一点一点を粒子レベルで捉えてしまうと説明ははっきり見える実態があるが故に分かりやすさはあるが、それだけを捉えているのでは研究に埒が明かず実践するのが難しい。そこで、統計学の考え方を使って、一定の揺らぎがあることは前提としてミクロレベルで見た際の方向づけすることを統計物理学では試みている)

ベイトソンとの関連

前回の課題本だったベイトソンの精神と自然で言われていたようなジェネティック・ソマティックの対比が、能動的推論で述べられている適応と適合の部分にもリンクしているよね、という話が出ていました。

具体的には、遺伝子的な変化は保守的に維持していくので固定に近くなるけど、身長が違うとか体調が違うとかは分散性の方によっているが故に固定しちゃうと変化に対応できないし分散すると種が維持できない状態をうまく避けられているという話が、外部環境と内部環境を完全に適合させることはしないけれど自由エネルギーを最小化していく話とリンクしていそう、という話をしていきました。

数式化に価値がある

能動的推論の価値としては、何かしら新しい発見を0から説明していくというわけではなく、既存の学問たち(それもつながることのないと思われていた学問たち)を数式で定式化して同じメカニズムがあると述べたのが一番の功績だよね、という話をしていきました。

自由エネルギーを最小化するメカニズムがこれだけ規範的な説明になっているのは改めて驚きです。