こちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。
会の概要
ヨーガン・アペロ氏の書籍「Manageing for Happiness」の日本語訳された本「マネージング・フォー・ハピネス」の出版を記念したイベントです。
翻訳者の寳田雅文さんの講演を聞き、その後にLean coffee形式で参加者が話す、という流れでイベントは進んでいきました。
会の様子〜講演〜
以下、スライドと会の様子を記載していきます。
Management3.0の定義
ヨーガン・アペロ氏が提唱したもので、仕事を取り巻くシステムの捉え方を述べているものであり、FW/プラクティスではなくマインドセットを指しているものだとお話がありました。*1
Management1.0/Management2.0とはOSレベル(前提としている考え方)から差異があるということで、Management1.0/Management2.0で前提としている階層型によるコントロールではなくネットワーク型によるエンパワーメントを前提としているということです。
Management1.0とは
階層型によるコントロールを前提として、そこで働いている間違った行動をしてしまう人たちを統制・監視することが重要だという考え方が紹介されていました。
Management2.0とは
階層型によるコントロールを前提としつつ、そこで働いている人たちを最大限活かすために、マネージャーがサーバントリーダーになったり、1on1で目標管理することなどを強制するような考え方だとお話が出ていました。
本(1-12章)の構成
ヨーガンの個人的な経験が語られた後に、原理*2が紹介され、最後にプラクティス*3が紹介される、という構成になっている、と紹介がありました。
Management3.0で原理とプラクティスがセットで提供されている理由
原理だけ提供されても行動はできないですし、プラクティスだけ提供されても文字通りにプラクティスが受け取られてしまってその組織のコンテキストに合わせられないため、Management3.0で原理とプラクティスはセットで提供しているということでした。
Management3.0とマネージング・フォー・ハピネスにおけるマネジメント
Management3.0では、ラインマネージャーが自身のロールを理解する補助となるのが第一のゴールとされており、マネージング・フォー・ハピネスではクリエイティブワーカー*4の仕事がマネジメントだと解釈されているというお話がありました。(=マネージング・フォー・ハピネスは管理職向けの本ではない)
マネジメントの委譲度合い
- self-Managed(自己組織化)
- Self-Selected(自己選択)
- Self-Governed(自己統制)
の3段階がマネジメントの委譲度合いとしてはありますが、マネージング・フォー・ハピネスでは、上記1と2の間くらいのコンテキストで話がされているということです。(少数のマネージャーは必要だというスタンスをとっているため)
マネジメントする対象
人ではなくシステムをマネジメントするんだという考え方がマネージング・フォー・ハピネスでは取られているということです。
なお、ここ最近のヨーガンは「人々はマネジメントするのではなくリードする」と話されているということで、リーダーシップは皆が担うものだと考えられているそうです。
Management3.0の軸となる考え方
人や組織は複雑適応系*5であり、中央集権的なコマンド・コントロールからは一線を画しているということでした。
また、Management3.0を実践する人は複雑系思考者であるという前提も置かれているということです。
複雑とは?
構造(理解しやすさ)と、振る舞い(予測しやすさ)の2軸で捉えているということです。
寳田さんの以下スライドのP16にも分かりやすく記載されています。
他にも、指標→観察→イノベーション→戦略→合意のプロセスをとるシステム思考の考え方も紹介されていました。
複雑系への対応
メンバー全員のコントロールを完全にするのは、メンバー全員の複雑性をマネージャーが備えていないと無理なため、中央集権型でコントロールするのは難しいという話がありました。
そのため、コントロールではなく、「導く」「コーチする」「刺激を与える」「支援する」...が対応する際のアプローチとして適切な言葉ではないか?という話も出ていました。
トリプルループ探求
寳田さんが翻訳された感想
寳田さんから、翻訳した感想を聞いていきました。
- 原文があるので0から何かを生み出す必要はない
- 何者にもなれない人の生存戦略になるかもしれない
- 自身が翻訳したことで、Management3.0が会社全体に広まった
ということでした。
会の様子〜講演中にあった質問に対する参加者の回答〜
講演中にいくつか質問があり、それに対して参加者の皆さんが回答をされていたので、以下に記載していきます。
自分の仕事でRightなことって何?それをRightにやるってどういうことなの?
- すぐにレスを返す
- 言いづらいことをちゃんという
- 我慢しない、抱え込まない
- 困った時に困ったっていう
- 人がやらないことをやる
- 議論の中で人格否定をしない。人格否定みたいな発言を2回したら退場(クビ)にさせるのがRightな行動。
- 自分事として仕事をする
- ちゃんと休める
- 役員にいわれたからではなく、本当にやるべきと納得していること。Rightな行動は、
- 牲者がいても、その声に耳を傾けながら進むこと。
チームで実施しているプラクティスは何の原理に基づいて実施されている?
- インセプションデッキとか振り返り
- 振り返り
- プラクティス: にこにこカレンダー, プリンシパル: 相手への関心
- プラクティス:ふりかえり, 原理:ふりかえって立ち止まる。目的を見直す
- 仕事中ずーっとZoomつなぎっぱなし → いつでも分からないことが聴ける
- 雑談タイム(テーマトーク)。仕事外のコミュニケーション重要
- 大げさにうなずく
複雑系にアプローチするのに適した言葉は?
- ではどうしたらいいか?(一緒に考えようか?)
複雑系にアプローチするのに適していない言葉は?
- やれ
- 黙れ
- なぜできないのか?
- 全部チェックする
ワーク〜ムービングモチベーターズ(ディープエクスプロレーション)〜
講演の中で、ムービングモチベーターズなどを参考に作られた、ムービングモチベーターズ(ディープエクスプロレーション)のワークをやっていきました。
以下の質問に、参加者それぞれで答えていくような形式でワークは行われました。
- 今週モチベーションに影響した仕事上の出来事は?
- 誰といるときに起こったか?
- それはどこで起こった?
- それはいつ起こった?
- 似たような出来事は前にいつ何が起こったか?
- それは誰といるときに起こったのか?誰が周りにいた?
- 似たようなことはどこで起こったのか?
- それらに共通していたことと、共通していなかったことは?
- 10のモチベーターで言うと何に関連してそうか?
- それは10のモチベーターで何番目に重要だった?
- そのモチベーターはどう動いた?
- そのモチベーターが上がると自分はどうなる?
- そのモチベーターが上がるためには周りの状況がどうなるとよかった?
- そのモチベーターが上がるには自分がどう動くとよかった?
- そのモチベーターが上げるためにはシステムにどう手を入れると良いか?
- 上記について、他の選択肢はあるのか?
- システムに手を入れる際のリスクは?
- それはいつ実施できるか?
- それがうまくいったかの判断はいつすればいいか?
- それがうまくいったかをどう判断するか?
Lean Coffee
次イベントもあって20分弱と短い時間でしたが、Lean Coffeeに参加してきたので、話した内容を記載していきます。
階層がないよね、といっても階層構造に依存している社員もいるがどうすればいい?
言われていることをやっている人が楽という人もいると思うが、どう対処しているのか?という話を聞いていきました。以下のような話が挙がっていきました。
- 出島戦略を活用していくことで、階層構造を崩していく。
- 階層構造が問題というよりは、「その人の理想的な振る舞い」と「目標がトップダウンで決められてしまって振る舞いが制限されていること」の摩擦が問題なのではないか?
- 階層依存じゃない世界を体験できる実験を本番じゃない安全な場で体験させる。そもそもどういうことか体感でわかんないと「その世界を作りたい」みたいに感じなさそう。
- 黒船ドーンじゃないと変われないとしたらそれはちょっと悲しい
- 組織全体が旧態依然だと苦しい
会全体を通した感想
Management3.0は初心者でしたが、バックグラウンドを一から丁寧に説明してくださったので、楽しく参加することができましたし、学びも多かったです。
講演中にあったワークも非常に楽しかったのですが、ジェットコースターに乗っているような感覚があって、Muralにすごい勢いで付箋が貼り付けられていく様子を見るのは圧巻の一言でした。