天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます

「私たちはどう学んでいるのか: 創発から見る認知の変化」を読んだ

こちらの本を読んで面白かったので、いくつかの面白かったポイントと感想を書いていきます。

「能力」という考え方の危うさ

本書を読むまで、「能力」をはじめ、「あの人は〜力*1がすごいんだよなあ」という表現を自然とすることが多く、種類は違えど人には何かしらの力が備わっているというメンタルモデルも頭にありました。

ただし、本書を読んで、「能力」をはじめとした「力」という概念やメタファーを人に重ねることは偏った見方を招いてしまう恐れがあることや、「力」という概念に引っ張られることでその人の可能性や得意なことを失うリスクがあることを知り、非常に学びが深かったです。

自身ができることを手続き的に分解する危うさ

筆者である鈴木先生自身もついついやってしまったことがあるというお話をされていた、「知識を(手続き的に)分解して、一歩一歩教えようとする」という教え方が如何に機能しないか、というのが丁寧なメカニズムの説明を通して理解できて、面白かったです。

自身は教える時は結構注意しているつもりですが、あまりにもわからない概念にぶち当たると、ついついこういう説明を求めるような質問をしてしまいがちだなあということに気がつけたのでよかったです。
チェックリストやスキルマップが機能しにくいのも、本書で言及されていた内容を踏まえると、プロセスが重くなるという話以外の観点から説明できそうだなあと感じました。

とりあえず動くものを作ってみるという学び方の意義

上の話とも少し関連するのですが、汚いコードでもいいからとりあえず動くものを作ってみるというやり方だったり、サンプルコードを写経してまず動くものを作ってみるというやり方の有効性が本書を読んで改めて実感しました。

また、スクラムアジャイルのアプローチも、学習を大切にしているということだけあって、本書で書かれているような考え方が随所で盛り込まれているなあと感じました。*2

知識の伝達

プロジェクトや他人に対して知識をどのようにシェアしていくか?というのは、よく考えることであると共に難しさも実感する話ですが、本書を読んで、「知識をどのように伝えるか?」という問い自体が知識の蓄積や創発を妨げているかもしれないなあと感じました。

本書では、具体的にどのような問いを立てるとよい、みたいな話はありませんでしたが、本全体を読んでから、「知識をどのように伝えるのか?」ではなく「知識をどう生成するか?」「幾つもの情報をどのように関連づけるか?」という問いを立ててみようと思いました。

全体を通した感想

鈴木先生の本ということで、外れることはないかなあと思って書いましたが、今回も想像以上に面白く、学びが深い内容でした。
本書を読んだからと言って、学びの速度が急速に発展するということはないと思いますが、人に何かを教えるときや、自分が新しいことを学ぶときに思い出したい内容が多く詰まっている本でした。

参考文献が充実しており、興味が出たテーマに対しては深掘りができるようにしてくれているのも嬉しくて、読みながら6冊程度積読書もできました笑

*1:観察力、論理的思考力、継続力、物事を整理する力...

*2:もっと認知科学的な観点から捉えたり説明する人が増えても面白そうだなあとも感じました