天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「コンサル一年目が学ぶこと」を読んでみた

先日の木曜日のOSTで話が出ていた*1こちらの本をコンサルタント5年目にして初めて読んでみたので(笑)、感想を書いてみようと思います。

本の概要

業種や業界を問わず社会人になって普遍的に使えるスキルを、社会人経験0ベースの状態で身に着けるということを目的に書かれた本です。

「コンサル流話す技術」「コンサル流思考術」「コンサル流デスクワーク技術」「プロフェッショナル・ビジネスマインド」の4カテゴリからなる合計30のスキル項目*2で構成されていました。

同意できる部分が多かった箇所

結論から話す/端的に話す

プレゼンも含めて全ての場合に必ずという訳ではないですが、これはコミュニケーションを取る上で大事だよな、という実感がありました。
特にネガティブなニュースの場合は、理由は良いのでとりあえず今どういう状態か、結論としてどういう話が問題になっているのか、というのを結論から端的に話してもらえると、話し手視点では特に嬉しいな、と感じる場面が自分の場合は多いです。(信頼関係がある場合は特に、とりあえずどう考えているかを教えてくれさえすれば、その考えを基に素早く次の行動が起こせたりするので)

感情より論理を優先させる

ここは意見が分かれそうな話だな、と読んでいて思いましたが、個人的にはまず論理から考える方が重要というのは納得がいきました。*3
感情は完全に読むことができず取り扱いも難しいので、感情と比較すれば取り扱いやすく努力で伸ばす余地がある論理の方をまずは考えて、その上で論理の押し付けにならないように話すのがスキルを身に着ける順序としてはいいかな、と思います。

常に自分の意見をもって情報にあたる

本にも書かれている通り、ただ人が言っていたことを鵜吞みにするのではなく、事実に対して「その事実から何が言えるのか?」と自分の意見を考え続けることで、自分だからこそ出せるオリジナリティある面白い意見が出てくると思います。
また、こういったことができていないと、「~に書いてあったから」「~が言っていたから」のような説明しかできなくなり、誰かの劣化コピーのような話を繰り返す人に近づいてしまうというのも(特にその業界での経験が長くなるにつれて)問題になると思います。

また、この本の構成自体に、「できるコンサルタントに聞いたら皆こう言っていた」「参考書籍となる本にはこう書いてあった」「その業界で成功している有名な人はこう言っていた」という体裁で書かれている部分が幾つかあり、これらの箇所はどれも同意できない部分ばかりだったので、なおさら自分の意見を持って情報に当たってこそ価値があるんだろうな、と同意できてしまったというのはありました...

上司の期待値を超える

信頼を得たり、この人面白いかも?と思ってもらうための手軽な方法が、誰か*4の期待値を超える、なのかなと自分は思っているので、同意できました。(「レポートを読んできて」と言われてレポートを読んでくるのと、レポートだけでなくレポートに書かれている参考文献も全部読んでくるのだと、後者の人の方が話を聴きたくなる)

相手のフォーマットに合わせる

相手が使う用語を使う、相手がいつも慣れ親しむフォーマットに合わせる、相手が持っている制約に合わせる、ということを意識すると、より相手の理解が進むと感じますし、理解が進むことでより相手に共感を持ってもらえるような内容の提案ができたり、心が動くような話ができるのかな、と考えているので同感できました。

同意できない部分が多かった箇所

全体的に仕事で持つマインド面の話は殆ど同意できませんでした。特に同意できなかった部分を記載しておきます。

コミットメント力を学ぶ

まず、

仕事に対するコミットメントとは、「約束したことを必ずやり遂げてくること」です。

というコミットメントの定義が納得いきませんでした。
必ずやり遂げられる約束をし続けてそれをやり遂げることにどのくらいの価値があるのかな、という疑問が湧きました。

資料ができないのは、スケジュールの問題ではなく、自分たちの能力が足りないからだ

という記載や、「徹夜で資料作成をした結果、部分的ではあるものの褒めてもらって不可能だと思えることでもやればできるという確信を得た」というエピソードも、再現可能性に乏しく、話の繋がりも全然分からないので、相当違和感がありました。

プロフェッショナルのチームワーク

チームワーク=分業

という記載や

マネジャーは段取りをしてタスクを設計し、新人はその個々の単位の仕事をこなしていく

記載が、チームワークとは遠い記載な感じがしました。
マネジャーの想いが過度に重視される状態で、新人の想いがないがしろにされてしまい、自己効力感がどんどん下がりそうだな、という気もしましたし、マネジャーが全ての仕事を見通して完璧に段取りできる前提なので、大分古典的な考え方のような気がしました。

喋らないなら会議に出るな

これは会社でも割とよく言われるのですが、個人的にはあまり同意できていません。

会議に出てひたすらその場であったことを記録することで、後でチームがふりかえりするのに役立つ情報を集めるみたいな貢献の仕方もあると思いますし、営業に同行して営業の人がどういう風に話すのかを見ることでコンテキストを合わせる技術を学べたりと、喋らずとも会議に出ることで貴重な経験を経て成長したりチームに貢献できたりといったメリットもあると考えているからです。

自分のチームでは、「何もしゃべらなくていいので実際にシステムを使っているユーザの話が聴ける会議には出て欲しい」とお願いしたことで、チームメンバーからはユーザー視点を持てるようになって、システム作りの視点が持てたという感想が上がり、仕様検討時もユーザー視点で考える意見が出るようになったことがあったので、この原体験も「喋らないなら会議に出るな」という意見に反発したくなる理由かな、と思います*5

全体を通した感想

やや主語が大きいかもですが、良くも悪くもコンサルタントっぽさがめちゃくちゃ出ている本でした。
コンサルタントの人たちがどういう考えを持っているのか、というのをキャッチアップするのには役立つ本だと思いました。

*1:新人の課題図書になっていた幾つかの本の中の一冊ということでした

*2:結論から話す、ロジックツリーを使いこなす...

*3:タイトルが若干紛らわしいですが、本では決して感情をないがしろにしている訳ではなく、まずは論理的な話になることを優先した方が話が進みやすいという趣旨で書かれているように思えました

*4:あるいは世間一般

*5:これまで喋る機会がないからという理由で会議に出ていなかった