天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「金融DXへの北國銀行の取り組み〜デジタルバンキングIT戦略担当取締役が語るチームづくりの秘訣~」に参加してきた

agile-studio.connpass.com

今日はこちらのイベントに参加してきたので、会の様子と感想を書いていこうと思います。

会の概要

以下、Connpassのイベントページから引用です。

トラディショナルな業界の典型といわれる銀行業界にありながら、我々北國銀行が約20年の歳月をかけて試行錯誤しながら進めてきたチャレンジの内容をできるだけ生々しくお伝えしたいと思います!

  • システム部門の地位向上
  • 発注・受注関係からシステムパートナーへ
  • システム障害を許容する文化へ
  • 本格的なアジャイル開発にチャレンジ
  • 心理的安全性とコミュニケーション

参考資料

www.corezo-mall.com

会で印象的だったこと

地域総合会社への変遷

これまでの銀行の役割(お金を流通させる役割)から地域総合会社へ変化することを目指しているという話がありました。
顧客に与えるインパクト、銀行という存在がやるべきこと、にフォーカスした結果見えてきた方向性ということで、純粋に共感できました。
話の途中で出てきた、これまでの銀行とは真逆のことをやっていこう、という発想(フルリモート制、裁量労働制、失敗歓迎文化の定着、自由なドレスコード、副業人材とのコラボレーション)は面白くて、実際に働いてみたくなる環境だな、と素直に思えました。

運用保守コストを減らすための工夫

運用保守:新規開発が8:2位と、圧倒的に運用保守にコストがかかってしまう現状だったところから、サブシステム統合や内製化などを進め、結果的に運用保守:新規開発が2:8に逆転したという事例に驚きました。
特に過剰すぎる機能や保守開発にかかるコストが大きい機能を削減するという施策については、効果があることは理解できるものの、今できることができなくなるという事実に対して敏感な印象が正直ある銀行さんが実行したことは衝撃でした。

障害に対する考え方の是正

「障害はどんなシステムでも絶対に起こしてはいけないから変化することは危険だ」という文化に対して、コンチプランの整備や障害を起こしても何とかなる機能(システム), 障害を起こしてはいけない機能で区分けして、一部システムでは積極的な実験や変化を起こせる土台を作って、「変化しない選択が正しいわけではない」「障害が絶対悪ではない」という文化に変遷していったという話が素敵でした。
変化して何かあった時の逃げ道を用意する、というのは自分自身を顧みるとあまりできていないことが多いので反省しました。

銀行とベンダーの一体感を高めるために

同じTシャツを着てミーティングに参加する、少し歩くとお互いに会えるような環境を作る(銀行がベンダー側に常駐する)、インセプションデッキやトレードオフスライダーを一緒に作る...銀行とベンダーで存在していた溝を具体的にどのように埋めていったのか、という話が聞けました。
この話に限らないですが、なるべく包み隠さずリアルな話を多数してくれて、その上でどのような取り組みがどのような効果を生んだのか、という話もしていただけたのが大満足でした。

ここまで大きな変革をしようと思ったきっかけ

インターネットバンキングの開発の中で、非常に厳しい経験*1を多数したことが、ここまで大きな変化をする覚悟をすることができたという話がありました。
話を聴く限り、現状を直視するのには相当な勇気が必要だったと思うのですが、現実に向き合い、ベンダーと銀行でワンチームになって課題に向き合った話は大きな刺激をもらうことができました。

人に対して投資する理由

丁寧に練られている教育プログラムや、社員がパフォーマンスを発揮できるようにするための開発環境整備など、かなり社員一人一人に対して投資をしている話が伺えました。
これだけ社員に投資をする源泉として、「性悪説ではアジャイルやDXを進めていくことは難しいという価値観がある」という話をされており、素敵な着眼点だと思いました。(平鍋さんも面白い!と食いついていました笑)

全体を通した感想

インターネットも満足に使えない環境だった所から、大胆に、でも辛抱強く変化を進めていく事例を聞くことができて、同じ金融ドメインに携わる者として、大変参考になる発表でした。
発表の内容はどれも学びがあり、印象的な内容が多くありましたが、過去の状況*2に加えて、現状改善されてきたことをかなり生々しく発表して下さったのが個人的には一番印象的でした。

発表で出てきた内容に加え、上記で書いたようなリアルな話をばんばんして下さるスタイルもあり、いい意味で銀行に対するイメージが崩れるイベントでした。

*1:QCDSは全て当初予定していた水準を満たしていないといけない前提を頑なに変えない、ベンダーと銀行での激しい敵対関係、全く進まない機能開発...

*2:石橋を叩いて渡らない文化、変化への強い抵抗、インターネットバンキングの話など...