天の月

ソフトウェア開発をしていく上での悩み, 考えたこと, 学びを書いてきます(たまに関係ない雑記も)

「ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?」を読んだ

を読んだので、読んだ感想を書いていきます。

読んだきっかけ

仕事でクライアントと大事な電話をしている最中に、Slackのメッセージでも、できる限り早急*1な判断が自分に求められるという事態が発生し、その場で判断をした結果、判断を誤るということが起きました。
判断を誤ったことが分かった後はすぐにふりかえりをしたのですが、このふりかえり中に本書の存在を知り、読んでみることにしました。*2

本で印象的だった箇所

判断や予測を間違える多数の例

自分が心理学を殆ど勉強していないというのが大きいですが、判断や予測を間違える例として、初めて聞く面白い実験結果が多数あって楽しかったです。
特に、起きた物事に対して何かしらの原因を結び付けて、勝手に因果関係を作りたがるというのが自分自身にもめちゃくちゃ当てはまっていて面白かったです。
また、投資のアナリストの分析結果を数年レベルで見てみると、一般人がサイコロを投げて分析結果を出すのと同じレベルでしか結果は的中していないという話は、衝撃を受けました。

分かっていると思っても殆ど何も分かっていないことが多い

自分にとっては、分かりみしかない話でした笑
クライアントの立場で要件を分かっている気になっていても全然分かっていなかったり、どうソースコードを書けば上手く実装できるか分かったと思って実装をしてみても、動かしてみると意図しない挙動が発生したり...と、多々ソフトウェア開発をしていると、何も分かっていないことに気が付くことが多々あるからです。

ただ、「分からないことが大量に分かっているからとりあえずやってみよう」と言ってとりあえず動いてみたり作ってみたりするのもこれはこれで危険な気がしていて、何で危険だと思うかや、どうバランスをとっていくのかについては、もう少しじっくりと考えてみたいです。

「知っていた」の危うさ

リーマン・ショックが起きた時、幾人もの専門家が「リーマン・ショックが発生することは知っていた」として、以前自身が出していた論文などを持ち出すことがあったようですが、筆者はこの「知っていた」という言葉を使うことに警鐘を鳴らしていました。
筆者は「殆んどのことは知らない、という事実を棚に上げてしまうのが問題だ」という話をしていて、面白かったです。*3

筆者の主張を読んで自身の行動を顧みると、「知っていた」という言葉でなくとも、「殆んどのことは知らない」という事実を棚に上げたと捉えかねない行動を自身が多くしていたことに気が付けたのが良かったです。

全体を通した感想

文章も多少読みにくい所はあれど、学者が書いている文章としては読みやすい部類に入ると自分は感じました。(原文を読んでいないので、もしかしたら訳者が相当分かりやすく訳してくれたのかもしれませんが...)
そのため、読み物として楽しみながら読んでいくことができました。

読んでいて、判断や予測が間違えることが多々あるのは良く分かったのですが、本書で言われている速い思考(システム1)が判断を間違えることを過度に恐れすぎないことも大事なのかもな、と思いました。*4

下巻も引き続き読んでみて、機会があれば感想を書いていこうと思います。

*1:遅くとも3分以内が目安

*2:ふりかえりでは、上記のような事態が発生しない仕組みをどう作ればいいのかを主には考えていたのですが、「そもそも何で誤った判断を下す確率が高いのか」というのが浅い経験則的にしか分かっていないことに気付き、色々文献を探していた所本書の存在を知り、読んでみることにしました。

*3:なお、自分は「知っていた」ことをアピールしても前に進むきっかけにあまり役に立たないことが多いのが問題なのかと自分は想像していました

*4:間違った判断をすることはあれど、間違った判断をしているからこそ楽しめることもあると思ったのが理由です。ただ、仕事だったり何かしらの責任が伴ったりする場面では、本書で書かれているような数々のバイアスがかかっていないかを意識するのはもちろん重要そうです