コルブの経験学習モデルについて勉強したので、学んだことを整理します。
勉強のきっかけ
社内で"システム開発スキルの育成対象者"という不思議なものに選ばれました*1
育成はコルブの経験学習モデルに基づいて実施するとのことで、育成者となる方に簡単に説明もいただきましたが、説明いただくまで経験学習モデルを知らなかったので、勉強することにしました。
コルブの経験学習モデルとは
組織行動学者のデービッド・コルブが提唱した、経験を重要視した学習モデルのことを指します。
コルブは、本や講義といった座学から学びを獲得するよりも、自らが実際に行った経験から学びを獲得する方が学習効果が高いと考え、経験から学びを獲得するまでを、以下のモデルで定義しました。(=コルブの経験学習モデル)
参考 : 経験学習の理論的系譜と研究動向
コルブの経験学習モデルの各工程について、以下で簡単に整理します。
1. 具体的経験
学習者が環境に対して働きかけることで、相互作用を発生させるステップです。
例えば、「ふりかえりの場でKPTの導入を提案した」などが例として挙げられます。
2. 内省的観察(省察)
具体的な経験について、視座/視野/視点を変えながら、客観的視点でふりかえりするステップです。
例えば、「KPTを導入したが、Problemが多すぎてチームが暗い空気になり、メンバーがふりかえりに対してネガティブなイメージを持つようになった」などが例として挙げられます。
3. 抽象的概念化
省察した経験を基に、経験を抽象化/概念化して、他の状況にも応用できる知識へと昇華させるステップです。
例えば、「ふりかえりは暗い空気で実施してもうまくいかない」などが例として挙げられます。
4. 能動的実験
経験と省察と抽象化を通して得られた知識を検査するために、実践するステップです。
例えば、「ふりかえりで暗い空気が流れ出る予兆を感じたら、ジョークやアイスブレイクを入れて空気を明るくする」などが例として挙げられます。
経験学習モデルが生まれた背景
哲学者のジョン・デューイは教育/学習の効果を高めるために、"経験の質"が何よりも重要だと主張をしました。
同時に、経験の質を深めるために、環境や他者から働きかけをしてもらうことの必要性を説きました。
コルブはこのデューイのモデルを組織論に応用することで、組織が目指していた"企業が望むスキル, 価値観にマッチした人材の育成を持続的に実施する"姿を実現しようと考え、経験学習モデルを開発しました。
経験学習モデルをより効率的に用いるために
- 内省を複数の人間で実施することで、一人では気が付けない視座/視野/視点で経験を捉え、内省の質を上げることができます。
- 内省の質は、「自身がどれだけ経験に深く寄与したか(深く寄与したと感じているか)」や「どれだけ具体的に内省できているか」に依存します。
- 抽象的概念の再利用性(=他の場面にどれだけ応用できるか)は、自身の経験と抽象的概念がどれ位結びつきが強いのかによって決まります。そのため、「あの時XXXしておけばXXXだったはず」という問題からの反省を基に作られた概念よりも、「あの時XXXしたことでXXXできた」という概念の方が、再利用性がある可能性が高いです。
参考資料
- 作者:デイヴィッド・コルブ,ケイ・ピーターソン
- 発売日: 2018/09/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)